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川井 龍介

(かわい・りゅうすけ)

@ryusukekawai

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)


この執筆者によるストーリー

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日系アメリカ文学を読む
第1回 『立退きの季節』―日系人収容所の日々

2017年2月24日 • 川井 龍介

75年前のいまごろ、アメリカの太平洋岸地域に住む日本人・日系人は、前年末の日米開戦によって、強制的に立ち退きを命ぜられ、全米10ヵ所に設けられた収容所へと送られることになった。 昨今のトランプ大統領による大統領令が、イスラム教徒の多い特定の国を対象にした入国制限を意図したことは、のちに恥ずべき歴史と評価された75年前の日系人収容政策を今思い起こさせ、日系人社会からも反発が起きている。 戦前から戦後にかけて日系人が経験した出来事については、文学上のテーマとして多くの日系ア…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第25回(最終回) 差別、偏見、戦いからどこへ

2017年2月10日 • 川井 龍介

「ノーノー・ボーイ」をめぐる連載も今回で最終回を迎える。この間、並行して進めていたこの本の新たな翻訳を、“パール・ハーバー”からちょうど75年目となるころ出版することができた。と、同時にアメリカでドナルド・トランプという移民に対して排他的な政策をとる大統領が登場した。 テロリストを排除するために、警戒を強めることには大方異論はないだろう。しかし、今回の政策を支える考えのなかに、特定の人種や民族、宗教に対する偏見が潜んでいるとみられても仕方がない。 …

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第24回 さまざまな観点からの批評、分析

2017年1月27日 • 川井 龍介

「ノーノー・ボーイ」を最初に翻訳した中山容氏が本名、矢ヶ崎庄司の名で残した「日系アメリカ人と文学―ジョン・オカダとローソン・F・イナダ―」(平安女学院短期大学紀要、 8, 23-30, 1977)を嚆矢として、その後も断続的に今日まで、この小説は論ぜられてきた。 作品紹介的なものから学術的な論文まで、出版物を中心に気がついたものを年代順に並べてみる。(「論文」、筆者・著者、『それが収められている出版物』の順) 「帰ってきたノーノー・ボーイ 谷譲次とジョン・オカダ」、…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第23回 日本では、70年代から今日まで論じられる

2017年1月13日 • 川井 龍介

小説「ノーノー・ボーイ」は、日系アメリカ人である著者、ジョン・オカダが英語で書いたアメリカ文学の作品であるが、文学にとどまらずさまざまな領域の専門家によって論じられてきた。日本では、文学をはじめ社会学や心理学のアプローチなどからこの小説の世界が取り上げられてきた。 文学のなかでは、「日系アメリカ文学」あるいは「アジア系アメリカ文学」という範疇の研究対象として論じられたことが多いようだ。近年では、2014年に出版された「憑依する過去―アジア系アメリカ文学におけるトラウマ…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第22回 これは小説ではない?初版時の評価や反応

2016年12月23日 • 川井 龍介

「ノーノー・ボーイ」の初版が出版されたのは1957年5月。前年日本は国際連合に加盟し国際社会へ仲間入りし、国内的には高度経済成長へと向かいはじめた。アメリカでは55年にアラバマ州モンゴメリーでのバス・ボイコット事件をきっかけに公民権運動が高まってきていた。 日系社会では、52年のウォルター・マッカラン法によって日本人一世も、すでに市民権を得られるようになっていた。しかし、まだ戦争の記憶は遠くはなかった。 戦前からつづくシアトルの邦人紙、「北米報知」では、ジョン・オカダの…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第21回 “パールハーバー”の日を迎えて ~「毎日メディアカフェ」で『ノーノー・ボーイ』を語る~

2016年12月9日 • 川井 龍介

安倍首相が、今月26,27日にアメリカ・ハワイを訪れ、オバマ大統領と会談し、真珠湾(パールハーバー)攻撃による犠牲者を慰霊するというニュースが先日流れた。現職首相が真珠湾を訪れ慰霊するのは、正確には初めてではないようだが、私たちの記憶のなかで、首相が公式に、日米開戦の地を訪れ慰霊すると国民に発表したのは初めてである。 パールハーバー攻撃からちょうど75周年を迎える直前の12月5日にこの発表はあった。その翌々日の7日、奇しくも「パールハーバー攻撃」から始まる『ノーノー・…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第20回 新たな訳で日本で出版

2016年11月25日 • 川井 龍介

新たな日本語版『ノーノー・ボーイ』が、来月ようやく出版されることになった。出版社は旬報社(東京都文京区)で、労働や福祉を中心に社会問題や生活にかかわるテーマの本を出版している会社である。これまで英語版は18刷りで15万部を超えるロングセラーになっている。翻訳もかつて出されたが、ここ10年ほどは日本語では読めない状況がつづいていたので、日本の読者へ久しぶりに装いも新たに、届けることができるようになった。 本の装幀を手がけた河田純氏は、翻訳原稿を読んだあとで「これは相当な…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第19回 第11章(終章)~希望の兆しなのか

2016年10月28日 • 川井 龍介

戦争が終わって故郷のシアトルに帰って来たイチローのその後数日を周囲の人間とのかかわりなかで描いた「ノーノー・ボーイ」は、イチローの内面の独白が軸になっていて、物語性は強くはない。それでも、イチローが苦悩しながらどんな生き方を見つけていくのか、苦悩から抜け出す道はあるのだろうかと読む者は考える。 最終章では、事件は起きるが、なにかが解決したとか、苦悩が解消していくといった感情の浄化のような出来事が起きるわけでもない。だが、最後にオカダが語るように、かすかな光が、主人公の内面…

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第18回 第十章、人種差別に向けられるオカダのなまざし

2016年10月14日 • 川井 龍介

アメリカのなかの日本人と黒人 日系人はアメリカ社会ではマイノリティーであり、移民当初から人種的な偏見にさらされてきた。同じようにマイノリティーとして中国をはじめアジア系のアメリカ人やユダヤ人、メキシコ人、ネイティブアメリカンも差別や偏見に遭ってきた。 こうした人種の問題について、オカダは、イチローの目を通して語っている。そのなかでも黒人に対しては、複雑な思いを寄せているのがわかる。 第一章のなかでまず、シアトルに帰って来たイチローは、かつての日本人町の繁華街で黒人…

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第17回 第九章、葬儀、そして再出発

2016年9月23日 • 川井 龍介

シアトルの中の日本と“お寺”  日本人移民の古い歴史を持つシアトルには、かつて日本人町が形成され、日本のコミュニティーにあるようなものは、ほとんど形をそろえていた。1903(明治36)年に渡米した永井荷風は、「アメリカ物語」のなかで、最初の寄港地であるシアトルの街のようすが、日本のまちと少しも変わらないと驚いている。 これらの中には、日本から持ち込まれた宗教(仏教など)もあり、日本的な寺院も建設されていく。シアトルでは移住当初、移民はキリスト教に…

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