日系(ニッケイ)—をめぐって

日系ってなんだろう。日系にかかわる人物、歴史、書物、映画、音楽など「日系」をめぐるさまざまな話題を、「No-No Boy」の翻訳を手がけたノンフィクションライターの川井龍介が自らの日系とのかかわりを中心にとりあげる。

 

migration ja

第16回 移民を運んだ船の物語「船にみる日本人移民史」から

今日のように海外への渡航が飛行機によるものだった時代と異なり、かつては、島国である日本から海外へとなれば船便に頼るのが当たり前だった。北米・南米などへ移住する人たちも船で長い時間をかけてようやく異国にたどり着いた。

横浜、神戸から大型の客船に乗り込んだ人は数知れない。こうした移民を乗せた船については、横浜の港に近い日本郵船歴史博物館に行くと、当時の様子などがわかる資料があるが、移民船というテーマにしぼってまとめて紹介された書籍はあまりみあたらない。おそらく、「船にみる日本人移民史 笠戸丸からクルーズ客船へ」(山田廸生著、中公新書、1998年)くらいではないだろうか。

「日本移民学会」があるように、移民についてはさ…

続きを読む

community ja

第15回 一世への挽歌 — 野本一平を読む

いつだったか、ロサンゼルスのリトルトーキョーで日本人の経営するジャズバーにふらりとひとりで入ったとき、常連らしき現地の日本人と話す機会があった。長年現地で暮らすその人は、旅の途中の私に現地の日本人のことをあれこれ教えてくれた中で、「いろいろ事情があって、日本にいられなくなりこちらに来た人もいますよ」と、言った。

先日、1990年に出版された野本一平著の「亜米利加日系畸人伝」(彌生書房)を読んでこの人の言葉を思い出した。バーでの話にあがった日本人からはずっと時代を遡ることになるが、同書に登場する、日本からアメリカに渡った一世の人生をたどると、「なるほどいろいろ事情があってのことだったんだ」と、しみじみ感じたからだ。

続きを読む

community ja

第14回 エスニックタウン鶴見を歩く

沖縄と南米が交差する

沖縄をルーツとする日系ブラジル人など南米に関わりのある日系人のコミュニティーをはじめ、中国系、フィリピン系、ベトナム系など外国籍の人が多い横浜市の鶴見区には、沖縄、南米の薫りをただよわせる店が点在している。行政も、だれもが暮らしやすい多文化共生社会を推進している。

鶴見区は、南は東京湾に面し、沖合に埋立によって整備された大黒ふ頭も同区内に位置する。東は川崎市に接し、川崎市南部とともに沿岸一帯は京浜工業地帯の一画をなし、沿岸部に河口を開く鶴見川が区内を南北に流れる。

この鶴見区のなかで、JR京浜東北線鶴見駅から沿岸部に向かって沖縄系、南米系のレストランや食料品店が点在していることは以前から聞いて…

続きを読む

community ja

第13回 「アイデンティティとは『居場所』のこと」、NPO法人ABCジャパン理事長・安富祖美智江さん

多文化共生のまち、横浜市鶴見区

今年4月からはじまったNHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」の主要舞台となっている横浜市鶴見区。ドラマにあるように古くから沖縄関係のコミュニティーがあるところとしていまや全国に知られるようになったが、ここには主に沖縄をルーツとする日系ブラジル人など南米に関わりのある日系人のコミュニティーもある。

加えて中国系をはじめフィリピン系、ベトナム系など外国籍の人が多く、区内の人口のおよそ20人に1人が外国籍というユニークな地域だ。区内には沖縄系のほか南米系のレストランやお店も点在し、地域住民も日本人、外国人とも文化や習慣の壁を越えて交流し、近年よく言われる「多文化共生」が実践されている。

し…

続きを読む

identity ja

第12回 ウクライナと日本

ウクライナから避難してきたサクスフォン奏者、五十嵐健太さんに聞く

今年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻で、多くの人が避難のため他国へと逃れた。遠く離れた日本へも断続的に避難民は到着し、その数は7月18日現在で1565人にのぼる。そのなかに、若きサクスフォン(サックス)奏者の五十嵐健太さんがいる。日本人の父親とウクライナ人の母親との間に生まれた五十嵐さんは、ウクライナの首都キーウで暮らしていたが戦禍を逃れて父の祖国である日本に避難してきた。

ウクライナではキーウ音楽院に通っていた五十嵐さんは、数々の国際コンクールで入賞、避難後の日本では東京音大に転入、器楽専攻サクソフォーン3年生として学ぶと同時に、コンサート…

続きを読む

タグ

ABC Japan book review Brazil California dekasegi identity Ippei Nomoto Issei Japan Japanese Ukrainian Kanagawa Kenta Igarashi Michie Afuso multiculture music Nikkei in Japan Okinawa refugee saxophone Tsurumi United States Yokohama