川井 龍介

(かわい・りゅうすけ)

ジャーナリスト。慶應大学法学部卒。毎日新聞記者などを経て独立、ノンフィクションを中心に執筆。『大和コロニー「フロリダに日本を残した男たち」』(旬報社)、『「十九の春」を探して』、『122対0の青春』(共に講談社)など著書多数。日系2世の作家、ジョン・オカダ著『No-No Boy』の翻訳を旬報社より出版。『大和コロニー』は、「Yamato Colony: The Pioneers Who Brought Japan to Florida」として、University Press of Floridaより英語版が出版。

(2018年3月 更新)

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孤独な望郷 ~ フロリダ日系移民森上助次の手紙から

最終回 夢と孤独と望郷と‐森上助次の人生 

20世紀のはじめ、アメリカのフロリダ州に日本人による入植事業があったことはあまり知られていない。「大和コロニー」と呼ばれた“日本人村”が生まれ、パイナップルや野菜作りが行われた。しかし厳しい自然条件や地価の高騰などで、コロニーは戦前に解体し、ほとんどの入植者は去っていった。

そのなかで最後まで現地にとどまり、取得した広大な土地を地元に寄付したことで、その名を現地に残した森上助次(ジョージ・モリカミ)は、生涯独身で質素な暮らしをつづけ、日本に一度も帰ることなく1976年2月に89歳の生涯を閉じた。

森上は、どんな気持ちでなにを考えてひとり、縁もゆかりもない異国の地で孤独のうちにも夢を描いて生きてきたのか。それを探るために「孤独な望郷」と題し、これまで彼が日本の義妹一家に送り続けてきた大量の手紙を整理し ...

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孤独な望郷 ~ フロリダ日系移民森上助次の手紙から

 第39回 すごい人だった、伯父助次

南フロリダの大和コロニーの一員として渡米、コロニー解体後もひとり最後まで現地にとどまり生涯を終えた森上助次は、戦後、夫(助次の弟)をなくした義理の妹、岡本みつゑさん一家にあてて膨大な数の手紙を送り続けた。これまでその手紙を紹介しながら助次の半生をたどってみたが、この手紙は、みつゑさんの二女で助次の姪にあたる三濱明子さんが長年保管してきたものだった。京都府木津川市に住む明子さんに、手紙をあらためて読み直してもらい、伯父の助次についてきいてみた。

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〈一度も会ったことなく手紙だけで〉

ーー 戦後1950年代から、ずいぶんたくさんの手紙が助次さんから来たようですが、よくこれだけ捨てずに保管しておきましたね。

三濱: 私ひとりだけに来たものではなく、最初は母のところにずっと来ていて、その後姉と私のところにもきたものがたくさんあります。母も姉ももういなくなったので、それらをまとめて私がとっておきました。

伯父 ...

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第38回 アメリカに来て70年、長い夢だった 

南フロリダの大和コロニーの一員として渡米、コロニー解体後もひとり最後まで現地にとどまり生涯を終えた森上助次は、戦後、夫(助次の弟)をなくした義理の妹一家にあてて手紙を書きつづける。さまざまな病をかかえ、体調を崩しながらもアメリカに来てから70年目を迎えたことや、数えで90歳となったことに感慨を覚え、故郷を去って以来一度も会わず先に逝った父母や兄弟のことを思い涙ぐむ。その一方でこれまでの年月を振りかえり、「何もできなかった」、「長い夢にすぎなかった」と嘆息する。

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〈新しい家がどんどん建つ〉

1975年7月26日

玲さん(姪)、暫くご無沙汰した。私の気分は別に変らぬ。よかったり悪かったりだ。ゴタゴタもあり不機嫌になることもある。物価は肉類の外は少し下向きだ。衣類、家具は投げ売り同然で ...

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孤独な望郷 ~ フロリダ日系移民森上助次の手紙から

第37回 地獄の門一つ手前で助かる

南フロリダの大和コロニーの一員として渡米、コロニー解体後もひとり最後まで現地にとどまり生涯を終えた森上助次は、戦後、夫(助次の弟)をなくした義理の妹一家にあてて手紙を書きつづける。土地寄付の記事が新聞に出たため、アメリカ国内だけでなく日本からも含めて百通近くの手紙が来たが、そのほとんどが「金の無心だ」と呆れる。体が自由に動かないといいながらもトラクターに乗ることもあるようだが、あるとき溝にはまって転倒し投げ出された。「地獄の門一つ手前で助かった」という。

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〈もう本は送るな〉

1975年1月

玲さん(姪)、お手紙や本を沢山ありがとう。この本は新刊だろう、読んだあとがない。殆どが自己批判だ。私には何の興味もない。読書は唯一の慰め ...

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第36回 最後の生き残りになった

南フロリダの大和コロニーの一員として渡米、コロニー解体後もひとり最後まで現地にとどまり生涯を終えた森上助次は、戦後、夫(助次の弟)をなくした義理の妹一家にあてて手紙を書きつづける。1973年11月、87歳になってだいぶ体のあちこちが痛むなど不調を訴えている。少し歩くのがやっとのようだ。農作業も難しくなってきたから注文した種は送らなくていいという。新しいトレーラーハウスを購入、湖水を見下ろす丘の上に据えた。近くに住む古くからの同胞が亡くなり、とうとう昔からの日本人はひとりになった。

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〈長生きするには歳を忘れる事〉

1973年11月13日

岡本家、三濱家の皆さん

この度は結構なお祝いを頂きお礼の申しようもありません。私は相変らず半身不随(下半身)な上、心臓や胃腸が悪く静養して居ります。先日も友達の招待を断り、終日寝転んで過ごしました ...

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