一世の記録を拾い集めた男 ~加藤新一の足跡をたどって~
第1回 人の一生を追うということ

1960年、全米を自動車で駆けめぐり日本人移民一世の足跡を訪ねた男がいる。翌年末、その記録を『米國日系人百年史〜発展人士録』(新日米新聞社)にまとめた加藤新一(当時61歳)である。広島出身の彼はカリフォルニアへ渡り、太平洋戦争前後は日米で記者となった。自身は原爆の難を逃れながらも弟と妹を失い、晩年は平和運動に邁進した。日米をまたにかけたその精力的な人生行路を追ってみる。
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人の人生を追うむずかしさ
ノンフィクションを書くために、ひとりの人間の一生をたどろうとしたことは、何度もあるが、明治以降に生きた人でも、普通の人の人生を明らかにするのは簡単なことではない。名もない普通の人の人生は、本人や家族が亡くなってしまい代が変わると、意外にわからない。
田舎の旧家のように代々同じところに住み続け ...