南米の日系人、日本のラティーノ日系人
日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。
このシリーズのストーリー
メキシコでメキシコの移民問題を考察 —2014年10月グアダラハラ大学を訪問—
2015年1月26日 • アルベルト・松本
スペイン語圏に関心を持つ学生や社会人が、留学や研修で最も訪れるのがスペインに次いでメキシコである。陽気で明るい国民性や、こってりした味つけの料理やテキーラ(アルコール度が45度から50度もある蒸留酒)でよく知られ、多くの日本人を魅了している。私の教え子も何人かは夏休みに旅行したり、中には卒業後、現地の日系企業に就職した者もいる。 この国は経済的には北アメリカに位置し、しかしスペイン語圏の国としては文化的にも社会的にもやはりラテンアメリカの一員で、りっぱな経済大国である。国…
大卒日本人の就職と外国人二世の就職
2014年12月8日 • アルベルト・松本
日本の教育制度は世界的にも高い評価を受けており、OECDが15歳を対象に行っている2012年実施の学習到達度調査では、日本は数学的リテラシーでは8位、読解力で3位、そして科学的リテラシーで3位である1。高校までの中等教育は非常にレベルも高く、義務教育(小中)を終えた卒業生の98%が高等学校に進学していることは世界一の水準である。その後、53.5%が大学に進学している2。 高卒後16.8%が就職しているが、地域別の就職率をみると東北や東海、九州の一部では約30%、東京や…
在日ペルー人とブラジル人の違いとその共通点
2014年9月17日 • アルベルト・松本
南米からの出稼ぎ日系就労者が来日してから四半世紀になるが、受入れ国である日本にとっては、出稼ぎ日系就労者は「南米」出身であり、その出身国による違いや支援策に対する反応の違いが意識されることはあまりなかった。南米最大の日系コミュニティーはポルトガル語を話すブラジルで(140万人)、2008年のリーマンショック以前は、日本在住の日系ブラジル人は31万人を数えた。他方、南米スペイン語圏を代表するペルー人は、日本に約6万人、本国に9万人だった。それが2013年12月末現在、在日ブラ…
外国人労働者の賃金は上がるのか
2014年9月3日 • アルベルト・松本
安倍政権になってから、国内の需要拡大を目指す賃上げが話題になっている。その傾向が一部の大手企業や外食産業でみられ、人手不足状態にある後者はパートやアルバイト契約で雇っていた職員を正社員にし、社会保険に加入して処遇改善でより安定した人材確保に努めている。これにより、手取りの給与が増えなくとも実質賃上げになっている。 この流れは、十数年前から南米の日系就労者の職場でも発生しており、中小の製造業や食品加工業では随分前から人材確保が課題になっていたからである。ただ、外国人労働…
日本人の海外移住、100年以上の足跡とは
2014年6月10日 • アルベルト・松本
私は10数年前から南米のJICA日系研修員や留学生に対して、この一世紀半の間、日本人がどのような経緯や目的で移住し、どの国や地域に定住または転住し、そしてどのような功績を残してきたかについて、レクチャーしている。受講生たちには、自分たちの祖先の思いや期待、数々の挫折や無力感、歴史に翻弄されながらも開拓した生活と事業、子孫に残してきた伝統と教えなどについて、考えてもらうようにしている。 1868年に日本政府が正式に移住者をハワイ王国に送り出したが1、移住先では他の国の移…
移民労働の受入れ議論が再燃
2014年5月21日 • アルベルト・松本
2014年現在、この日本で30年前と同様に一部の業界で発生している人手不足を理由に、外国人労働者の受入れ議論が展開されている。2020年の五輪開催に必要なインフラ建設、既存のインフラ補修、東日本の震災後の復興事業、新規交通網のインフラ整備等、老朽した住宅や公共施設の解体や耐震補強等、ほとんどが建設関連の事業であり、かなり深刻な人手不足である。90年代初期のバブル崩壊後、建設業界は大きな影響を受け公共事業も大幅に削減されたため、建設会社の数も半分以下になり、多くの従業員が転職…