南米の日系人、日本のラティーノ日系人
日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。
このシリーズのストーリー
欧州からラテンアメリカへの“移住”とは
2013年7月19日 • アルベルト・松本
アメリカ大陸では、19世紀から20世紀初頭まで数千万人の移民を受け入れることで国づくりを行ってきた。しかし1960年から70年代にかけてラテンアメリカの経済が低迷し、インフレ、テロ活動の激化とそれに伴う軍事政権の登場によって、はじめは南米域内を、そして次第に欧米諸国に多くの者が転住・移住を余儀なくされた。国連のラテンアメリカ・カリブ経済委員会(英:ECLAC、西:CEPAL)の推定によると、「失われた10年」と呼ばれる80年代の債務不履行や経済衰退や90年代のネオリベラリズ…
来日外国人の犯罪データを検証 〜この20年間を検証し、在日南米日系人の状況も考察〜
2013年7月5日 • アルベルト・松本
1990年の入管法改正で南米諸国から多くの日系人が一時的な出稼ぎ労働を目的に来日したが(実際は、80年代の半ばから来ており日本人一世の場合は当然外国人としての記録はないが、二世たちは家族訪問として来日していた)、今や多くがこの日本に定住している。 当初この南米コミュニティー内での犯罪は、不法滞在または不法就労、偽造書類(日系人として成り済ますための偽造行為)といった入管法への違反が中心だったが、次第に窃盗事件も増え、盗品売買、強盗や強盗傷害、そして数件が少ないとはいえ殺人…
「南米日系人のソフトパワー」〜自国でソフトパワーなり、日本との架け橋にも〜
2013年4月16日 • アルベルト・松本
「ソフトパワー」とは、アメリカのハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が2004年に提唱した概念である1。それは、国家がハードパワーという軍事力や経済力等だけに頼らず、その国の文化や価値観、外交政策によって相手の理解、共感、支持を得て、それで相手を魅了し、味方にし、国際社会から信頼と発言力を得るという力である。 日本ではこのソフトパワーという概念をハードパワーに代わる力であるかのように理解しアピールすることが多い。ソフトパワーと聞いて、海外でかなり注目を浴びている日本の文…
パラグアイでラテンアメリカ日系社会の展望を議論
2013年4月2日 • アルベルト・松本
パラグアイは、南米中部に位置しており、アスンシオン国際空港で売られているTシャツには「CORAZON DE AMERICA(アメリカ(南米)の心臓)」と描かれている。内陸の国で、ブラジルとアルゼンチンという大国の狭間で独立後も様々な試練を乗り越えながら生存してきた国である。ここ10年前ぐらいまでは、南米ではボリビアに次いでもっとも平均所得が低く、格差も大きい国だった。詳細は各サイトで把握することが出来るが1、面積では日本より多少広い40万km2で、人口は650万人、国民総生…
ダイバーシティーを積極的に活用〜欧州の多文化共生都市会議に参加して学んだこと〜
2013年3月19日 • アルベルト・松本
2012年の9月末、欧州評議会の招待でスペインのサンセバスチアン(北東部のバスク自治州)で開催されたインターカルチャラル・シティ・プログラムの会議に出席した1。日本からも自治体関係者と明治大学国際日本語学部の山脇啓造教授が参加した2。 移民の多い欧州での国際会議は私にとってはじめての経験だったが、スペインからは地元サンセバスチアン、バルセロナ、カディス等の自治体職員やコンサルタントが参加し、イギリス、オランダ、ドイツ、ロシア、デンマーク等、他国からも専門家が集まった。…
日本の日系アルゼンチン人とは〜他の日系人とデカセギから抜け出せるか-その2
2012年11月26日 • アルベルト・松本
その1>>2010年末、「日系人労働者は非正規就労からいかにして脱出できるのか〜その条件と帰結に関する研究」という調査報告が、全労済協会から出版されたが、そこにはアルゼンチンの日系デカセギ労働者についてかなり詳しい考察がある1。 この調査では、国内外300人以上に聞き取り調査しており、アルゼンチンの日系社会で生まれ育った私にとってもかなり興味深いものである。 調査を実施した稲葉と樋口は、日本にデカセギに来た者たちの学歴はそれほど高くなく、日本語の理解力は多少高いとはいえ…