南米の日系人、日本のラティーノ日系人
日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。
このシリーズのストーリー
南米の経済低迷と今後のビジネス環境
2015年11月18日 • アルベルト・松本
この10数年は中南米の高い経済成長率が注目の的になり、日本在住の日系就労者たちもその状況に期待してかなり帰国した。しかし、ここ2年ぐらい前から経済低迷が深刻化しており、特に大国であるブラジルの情勢があまり思わしくない。でも南米諸国の多くは、ブラジルにモノやサービス、エネルギー(国土の広いブラジルでは、電力と天然ガスを生産しているが、パラグアイからは電力、そしてボリビアからはガスを購入している)を輸出入しているが、この域内総生産の半分以上を占めているブラジルの不況の影響は非常…
スペインとフランスを訪問、外国人社会とは
2015年10月21日 • アルベルト・松本
今年の2月末、学会に参加するためスペインのサラゴサ大学を訪れた。この大学には法学や文学等を中心に「日本研究グループ」があり、熱心に日本のことを研究している。多数の学生が日本語をマスターしており、日本の大学と交換留学プログラムもある。学会のテーマは「日本と個人、他分野にわたる比較分析」で、スペイン各地の大学から研究者や院生が参加し、日本からは私を含めて5人が発表の機会を得た1。開会式には、大学の上層部や駐スペインの越川日本大使及び国際交流基金マドリード事務所の上野所長(当時)…
ロサンゼルス訪問とアメリカの日系人
2015年8月13日 • アルベルト・松本
2014年10月念願のロサンゼルスを訪れ、以前からお世話になっている全米日系人博物館を見学することができた。ここは、米国日系人に関する資料や展示物があるだけではなく、アメリカ大陸の日本人移住の資料やコラム、証言、写真、動画がある日系人最大の資料館とも言える1。 日本人のアメリカ移住は、明治元年(1868年)にハワイ移民(当時はまだ王国でその後合衆国に併合される)から始まり、その148人は個別契約によって明治政府の出国許可もなく渡航したのである。あまりにも過酷な労働だっ…
日本で就職する外国人留学生の増加と日系企業の課題
2015年7月28日 • アルベルト・松本
2014年現在の来日留学生の数は10年前より80%も増加している。当時も、アジア諸国出身が9割以上を占めていたが、この時期中国からの留学生が急激に伸びた1。 2014年の統計では、日本語教育機関に在籍している外国人留学生は44,970名(中国、ベトナム、ネパール国籍だけで8割を占める)で、大学や大学院に在籍しているのが139,185名(中国、韓国、ベトナム、ネパール国籍で同じく約8割弱にある)で、両者を合計すると184,155人になる2。日本の入国管理局は、卒業後の在留資…
次世代日系人指導者の役割と期待
2015年6月19日 • アルベルト・松本
日系人とは、基本的に戦前・戦後海外に移住した日本人とその子孫を意味するが1、近年は、当人が日系人として自己認識しているかどうかは別として、欧米やアジア諸国に駐在しそこで生まれ育った子弟もおり、日系人の幅がひろがっている。南米では未開の土地を開拓し、農業を始め各分野で活躍した移住者の功績は大きく、その子孫である日系人を含め日本の「資産または資源」であるという考え方が存在する。戦前は特にその見方が強かったため、戦争に突入すると多くの日本人・日系人指導者は敵性外国人とみなされた。…
外国人と人権、大阪シンポジウムに参加して考えたこと
2015年5月13日 • アルベルト・松本
このようなタイトルを見ると、この日本では外国人の人権がかなり侵害されているかのように錯覚してしまうが、日本も法治国家として国民と外国人の諸権利と義務を規定しており、参政権や経済活動の一部制限等を除いては外国人もほとんど同じ権利を有している。 私が外国人労働者問題に関わるようになった90年代頃は、雇用主が労働者の旅券を強引に取り上げたり、在留資格(ビザ)申請に対する法外な手数料を徴収したり、一部の不動産会社や店が外国人の入店を断ったりする人権侵害事件が相次いで発生した。当初…