南米の日系人、日本のラティーノ日系人
日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。
このシリーズのストーリー
南米の年金状況と日本の南米就労者の年金問題
2016年11月23日 • アルベルト・松本
近年、外国人相談窓口では年金や介護、老後に関する相談が増えているという。2015年12月現在、南米出身の在留外国人は23万人で、そのうちブラジル人が17万人、ペルー人が4万7,000人、ボリビア人が5,400人、アルゼンチン人が2,600人等々である。年齢別にみると60歳以上の割合は全体の10%かそれ以下なので、今すぐに南米出身者の多くが年金の受給や介護に直面するわけではない。ただ、南米からの新規入国者はほとんどいないことで、一部の世帯は本国に残してきた年老いた両親を呼…
ラテンアメリカの低い貯蓄率、日本も実はかなり低い?—日本の南米日系就労者世帯の貯蓄率は?—
2016年10月10日 • アルベルト・松本
中南米諸国は、2000年頃から高い経済成長率が注目され、新たな中産階級による消費市場が世界の関心の的になった。石油や鉱物資源、穀物という第一次産品の国際価格が高騰し、多くの国々(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ボリビア、ベネズエラ、チリ、ウルグアイ、パラグアイ、ペルー、エクアドル、コロンビア等)の財政は潤い、充実した社会政策を展開し、今度こそ構造的な貧困や教育問題等を自己財源で対応できると考えられた。特に新興国として最も注目されたのはブラジルで、30数年後には現在の日本の…
次世代日系人と日本との繋がりー中南米日系社会の変化—
2016年9月30日 • アルベルト・松本
「次世代の日系人1」とは、いったいどのような日系人なのだろうか。単に中南米諸国に移住した日本人の子孫たち — 三世、四世、五世など(日本人だけでなく、ハーフやクォータ2等、他の人種・民族の血を引き継いでいる人たちも含む)— のことなのか。それとも、日本人離れした今話題の「ミレニアル(millennials)世代」的な日系人で、しがらみがなく、帰属意識も薄く、かつ柔軟で新しいもの好きで、クールジャパン的な要素に感心がある若者たちのことなのか。いや、もし…
同一労働同一賃金原則は、外国人労働者には適用が困難?
2016年7月25日 • アルベルト・松本
今年の一月末、政府は「ニッポン一億総活躍プラン」の一環として、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えを示した。正規と非正規雇用の間に存在する賃金格差の是正と、非正規労働者の所得改善という思惑がみられるが、この議論には賛否両論があることは言うまでもない1。 同じ時期に、ペルーの経済誌「GESTION」のサイトで、「根拠のない理由で同じ職種で賃金格差がある場合、経営者は3年の実刑になる」という記事を目にした2。いかなる労働者もペルー労働基準監督署に告発し、その格差と不当な扱いが…
日系人が知らないラテンアメリカと日本の経済関係
2016年5月18日 • アルベルト・松本
ラテンアメリカには、165万人におよぶ世界でもっとも大きな日系社会が存在している。一方、日本には90年代から移住した日系就労者の定住化で、今や24万人の南米系の日系コミュニティーが形成しつつある。日系人とは、戦前と戦後の日本人移住者及びその子孫のことであるが、今では非日系配偶者を持つ家庭も増えており、コミュニティーもかなり多様化している。日本とは、日本語・日本文化というもので繋がっていることが多いが、国や世代によってその継承の度合いはかなり異なっている。南米と日本の日系コミ…