ディスカバー・ニッケイ

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深沢 正雪

(ふかさわ・まさゆき)

@masayukifukasawa

1965年11月22日、静岡県沼津市生まれ。92年にブラジル初渡航し、邦字紙パウリスタ新聞で研修記者。95年にいったん帰国し、群馬県大泉町でブラジル人と共に工場労働を体験、その知見をまとめたものが99年の潮ノンフィクション賞を受賞、『パラレル・ワールド』(潮出版)として出版。99年から再渡伯。01年からニッケイ新聞に勤務、04年から編集長。2022年からブラジル日報編集長。

(2022年1月 更新)


この執筆者によるストーリー

《幾山河ここに恋あり命あ里》に込められた想い

2018年6月20日 • 深沢 正雪

《幾山河ここに恋あり命あ里》という川柳を見た覚えがないだろうか――サンパウロ市リベルダーデ区ガルボン・ブエノ街の大阪橋のたもとにある、日本庭園を入ったすぐ左に建てられている句碑の作品だ。 東洋街に出入りしながら、心を焦がすような熱い恋をして、命を削るような辛い思いをした人は、ここは異国の地だが一種の故郷(里)のように感じる――そんな想いが込められている。東洋街だけでなく、全ての移住地、植民地に当てはまる名句ではないか。 だが、句碑の作者名の部分だけが、なぜか最近刻ん…

親が日系人だと算数の成績が良くなる?!

2018年2月26日 • 深沢 正雪

《両親のどちらかが日系人である子どもは、公立小学校での算数の学力がイベリア(スペイン、ポルトガルなどイベリア半島出身者)系子孫よりも1年先をいく》――そんな興味深い調査結果が、17年12月24日2時00分付けフォーリャ紙電子版で発表された。これは両親が持つ移民文化が、子どもの学力にどんな影響を与えるかを調べた画期的な調査だ。 全国学力試験の受験者の苗字から、親がイベリア系、日系、ドイツ系、東欧州系、イタリア系、シリオ・リバネース系のいずれかである場合の学力を比較したも…

バイリンガル教育としてのコロニア日本語教育

2018年2月5日 • 深沢 正雪

「日本語教育は幼稚園に投資すると効果が高い」――現在、当地で「南米日系社会における複言語話者の日本語使用特性の研究」を調査する金沢大学の松田真希子准教授は、そう結論付ける。 ピニャールやピラール・ド・スルなどの日本語学校で「かなり高度なバイリンガルが育っている」ことに驚き、幼稚園があり、日本語学校にほぼ毎日通っている現実がその結果を生んでいると見ている。 つまり、今までコロニアで「日本語教育」と呼んでいた物は、日本の専門家から見れば、実は「バイリンガル教育」であった…

ニッケイ物語 6—いただきます 2!新・ニッケイ食文化を味わう
復活のフェイジョアーダ

2017年10月4日 • 深沢 正雪

「3年ぶりに美味しく頂きました」――。2005年6月、ブラジル岡山県人会の岡詢(まこと)会長(当時、66歳)は、ブラジルを代表する料理「フェイジョアーダ」の皿を前に、なにかをふっきったような晴れ晴れとした表情でそう言った。 それもそのはず、岡さんは同県人会館でフェイジョアーダの大鍋をひっくり返して全身大やけどの瀕死の重症を負った過去があるからだ。 ブラジルを代表する郷土料理フェイジョアーダは、黒豆を牛の耳や干し肉などと煮込んだもの。肉の脂分やゼラチン質がたっぷり溶け出し…

そもそも「移民」は差別語か? アイデンティティに関わる表現 ー その2

2017年2月1日 • 深沢 正雪

その1を読む >> 「渡日」「訪日」「帰国」日本との距離感が違う言葉 言葉は生き物だ。だから、言外に感情がこもる。移民が使う言葉には、「祖国から離れた場所にいる」という「郷愁を伴った距離感」が無意識に強く付きまとう。「本来自分がいるべき場所」と「今いる場所」のズレが激しくあり、人によっては「帰りたくても帰れない」という状況に陥って、ただの「郷愁」から「精神病」の域になっている人が相当数いる。そのような人が言葉を発した場合、あらゆる日常の中に、自然と強い郷愁の感情が込めら…

そもそも「移民」は差別語か? アイデンティティに関わる表現 ー その1

2017年1月31日 • 深沢 正雪

前回書いた『南米の日本語版クレオール語「コロニア語」』の続編として読んでもらいたい。今回は「アイデンティティ」に関わるビミョウなコロニア語表記などを中心に書いてみた。  そもそも「移民」は放送禁止用語か? ニッケイ新聞2004年6月4日付の「記者の眼」コラムで、NHKでは「移民」という言葉を放送禁止用語にしているのでは―という疑問と同社からの返答を書いた。 というのも、サンパウロ人文科学研究所の宮尾進元所長(故人)から、NHKの生中継番組に出演する時、同社スタッフから…

南米の日本語版クレオール語「コロニア語」・「海外」という言葉の島国感覚 ー その2

2017年1月5日 • 深沢 正雪

その1を読む >> 大統領名の表記すら異なる現実 日本のマスコミが使っている個人名表記と、ブラジルの邦字紙で使っている表記にも、自然に違いが生まれる。 たとえば、この2016年8月末に罷免されたジウマ前大統領のことは、日本では「ルセフ大統領」という。 我々としてはブラジルのマスコミが普通に「presidente Dilma(ジウマ大統領)」というから、そのまま日本語にした方が現地の感覚に近い。 だが、日本では苗字表記で統一されている。あたりまえだが「晋三首相」とは…

南米の日本語版クレオール語「コロニア語」・「海外」という言葉の島国感覚 ー その1

2017年1月4日 • 深沢 正雪

慣れるのに3カ月かかったコロニア語 バブル真っ最中の1991年の暮れ、東京で東証二部上場企業に勤めていた私は、何を血迷ったか、邦字紙で働き始めようと思い立った。 ブラジルの邦字紙「パウリスタ新聞」東京支社の面々と面接を受けた時、「日系社会の人は、みんな日本語をしゃべるから、最初はポルトガル語が分からなくても大丈夫だよ」との説明をうけ、安易にそれを信じていた。 だが、その期待はみごとに裏切られた。1992年4月にサンパウロに到着。それから日系社会で使われる日本語方言「コ…

坂本龍馬の開国論のその先に — ブラジル移民の祖、水野龍 ~その2

2016年11月29日 • 深沢 正雪

その1を読む >>  明治の開国論から海外移住へ 年を経し醜(しこ)の醜草(しこぐさ)根をたえて移し植えなん大和撫子(やまとなでしこ) スザノ福博村の大浦文雄さん宅には、水野の最晩年の直筆の、そんな短歌が額に入れて飾られている。大浦さんは、スザノ市の陸橋に水野龍の功績を顕彰してその名を付けた。そのお礼にと、水野龍の未亡人、万亀夫人が置いていったものだ。 古い伝統を持つ日本を「醜い草」に譬えるあたりに、切ない故郷の良い面、悪い面への愛憎の想いが1…

坂本龍馬の開国論のその先に — ブラジル移民の祖、水野龍 ~その1

2016年11月28日 • 深沢 正雪

1908年に第1回移民船「笠戸丸」を運行させ、ブラジル移住を始めた男「水野龍」(1859 ―1951年、高知県)。そんな大功労者の息子・龍三郎(85、二世)を取材したとき、「親父は『移民事業は失敗だった』と落胆したまま死んだんです…。日本移民百周年(2008年)でブラジル社会からあのように盛大な賞賛が寄せられた時、まず墓前で父母に伝えました。一世紀を経て、お二人の苦労は、ようやく報われました、と」と感極まった様子で言ったのを聞いた時、心底おどろいた。 家…

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