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親が日系人だと算数の成績が良くなる?!

親が持つ移民文化が子の学習結果にもたらす影響の調査を報じた記事(2017年12月24日、Folha de S.Paulo

《両親のどちらかが日系人である子どもは、公立小学校での算数の学力がイベリア(スペイン、ポルトガルなどイベリア半島出身者)系子孫よりも1年先をいく》――そんな興味深い調査結果が、17年12月24日2時00分付けフォーリャ紙電子版で発表された。これは両親が持つ移民文化が、子どもの学力にどんな影響を与えるかを調べた画期的な調査だ。

全国学力試験の受験者の苗字から、親がイベリア系、日系、ドイツ系、東欧州系、イタリア系、シリオ・リバネース系のいずれかである場合の学力を比較したもの。その結果、日系人の子どもの場合は算数の成績が特に優秀だった。

《両親のどちらかが日系、ドイツ系、東欧州系、イタリア系の場合、算数の成績がイベリア系子孫よりも優れている。父と母が日系である場合、算数の優位性は学習1年分に相当する》とも。

これはIPEA(応用経済研究所)の研究者レオナルド・モンテイロ氏とダニエル・ロペス氏、INEP(国立教育研究院)のジェラルド・シウヴァ・フィーリョ氏らの共同調査だ。ブラジル生まれで、同じ教育機関で学んでいるが、違う文化遺産を持つ子ども(三世まで)を比較する目的で行われた。

調査方法としては、まずサンパウロ州移民記念館で7万1千の苗字のルーツを調べ、さらにコンピューターの調査プログラムによって22万の苗字を加えた。それをCenso Escolar 2013と2015の参加者の苗字と掛け合わせ、ルーツが判明した7万4608人に対して成績を調べた。つまり、れっきとした全伯調査だ。

ロペス氏は《文化だけが学習に差をつける訳ではない。そして、なぜか小学3年から5年の間に差が拡大する》と指摘し、追加調査を提言。

フォーリャ紙が取材した日系子孫は《両親を落胆させることが怖いし、うまく行くこと、生活をより良くすることが当たり前という空気がある》と答えている。

日系数学教師クリスチーナ・カントさん(43)も同取材に対し、《数学を学習する事は、楽器を弾くこと、運動をすることと一緒。練習する必要がある。この練習の必要性に関して、日系人は自然に受け入れる部分がある》と認めている。

彼女は《ジャポネースは生まれつき数学が得意》と言われることに疑問をもち、USP大学院修士で研究までした。クリスチーナさんの両親は小商店主。一度も「勉強しろ」と強制されたことはないが、「良い生活を得るためには、学校でいい成績を取らないといけないという信念(家族の雰囲気)があった」と同紙に答えている。

さらに中川ヒロコ・イベッチさん(60)も記事中で、《家族の名誉を苗字の重みに感じている。母は小学三年、父は4年までしか行かなかった。彼らは学歴でバカにされたから、私たちの教育は彼らにとってとても重要なものだった。私たちは、両親が大事だったから、その期待に応えようと勉強した》と語り、さらに孫のタイスちゃん(11)に関しても《(10点満点中の)8点では「良くできた」とは思わない》と同じ期待を抱く。

同調査によれば、一番成績が良いのが「日本文化を持つ親」、次が「ドイツ系」、「東欧州系」、「イベリア系でない両親」、「イタリア系」、「片親がイベリア系でない」という順番だった。

両親が持つ「勤勉」「真面目」「正直」な性行が子どもに伝わり、学習面で発揮されると、学校の成績に影響が生まれるようだ。同じ学校で勉強しても、勤勉な方が良い成績を取るのは自然なことだ。良い成績をとり、良い大学へ行ければ、良い職業に就ける可能性が高まり、社会上昇につながる。

戦後の日本移民の戦略は、まさにそれだった。それが戦後73年経った今まで連綿と続いていることは、日本移民がブラジルに残した最大の精神遺産かもしれない。これを調査・判明させたブラジル人研究者に拍手を送りたい。

 

* 本稿は、ブラジルのコミュニティ紙「ニッケイ新聞」(2018年1月16日)からの転載です。

 

© 2018 Fukasawa Masayuki

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