深沢 正雪

(ふかさわ・まさゆき)

1965年11月22日、静岡県沼津市生まれ。92年にブラジル初渡航し、邦字紙パウリスタ新聞で研修記者。95年にいったん帰国し、群馬県大泉町でブラジル人と共に工場労働を体験、その知見をまとめたものが99年の潮ノンフィクション賞を受賞、『パラレル・ワールド』(潮出版)として出版。99年から再渡伯。01年からニッケイ新聞に勤務、04年から編集長。

(2009年1月 更新)

food ja

ニッケイ物語#6: いただきます 2!新・ニッケイ食文化を味わう

復活のフェイジョアーダ

「3年ぶりに美味しく頂きました」――。2005年6月、ブラジル岡山県人会の岡詢(まこと)会長(当時、66歳)は、ブラジルを代表する料理「フェイジョアーダ」の皿を前に、なにかをふっきったような晴れ晴れとした表情でそう言った。

それもそのはず、岡さんは同県人会館でフェイジョアーダの大鍋をひっくり返して全身大やけどの瀕死の重症を負った過去があるからだ。

ブラジルを代表する郷土料理フェイジョアーダは、黒豆を牛の耳や干し肉などと煮込んだもの。肉の脂分やゼラチン質がたっぷり溶け出し、やわらかくなった黒豆がどろどろのスープ状になっており、マンジョッカの粉をかけ、御飯と共に食べるこってりした料理だ。

なぜか土曜日の定番料理で、ブラジルにきたばかりの日本人は、一見「ぜんざい」かと勘違いする ...

続きを読む

identity ja

そもそも「移民」は差別語か? アイデンティティに関わる表現 ー その2

その1を読む >>

「渡日」「訪日」「帰国」日本との距離感が違う言葉

言葉は生き物だ。だから、言外に感情がこもる。移民が使う言葉には、「祖国から離れた場所にいる」という「郷愁を伴った距離感」が無意識に強く付きまとう。「本来自分がいるべき場所」と「今いる場所」のズレが激しくあり、人によっては「帰りたくても帰れない」という状況に陥って、ただの「郷愁」から「精神病」の域になっている人が相当数いる ...

続きを読む

identity ja

そもそも「移民」は差別語か? アイデンティティに関わる表現 ー その1

前回書いた『南米の日本語版クレオール語「コロニア語」』の続編として読んでもらいたい。今回は「アイデンティティ」に関わるビミョウなコロニア語表記などを中心に書いてみた。 


そもそも「移民」は放送禁止用語か?

ニッケイ新聞2004年6月4日付の「記者の眼」コラムで、NHKでは「移民」という言葉を放送禁止用語にしているのでは―という疑問と同社からの返答を書いた。

というのも、サンパウロ人文科学研究所の宮尾進元所長(故人)から、NHKの生中継番組に出演する時、同社スタッフから「『移民』という言葉は棄民に通じる印象を持たせるので ...

続きを読む

community ja

南米の日本語版クレオール語「コロニア語」・「海外」という言葉の島国感覚 ー その2

その1を読む >>

大統領名の表記すら異なる現実

日本のマスコミが使っている個人名表記と、ブラジルの邦字紙で使っている表記にも、自然に違いが生まれる。

たとえば、この2016年8月末に罷免されたジウマ前大統領のことは、日本では「ルセフ大統領」という。

我々としてはブラジルのマスコミが普通に「presidente Dilma(ジウマ大統領)」というから、そのまま日本語にした方が現地の感覚に近い。

だが、日本では苗字表記で統一されている。あたりまえだが「晋三首相」とはいわない。

だがブラジル在住者にとっては、「ルセフ大統領」ではどこかオカシイ感じがする。

 

不思議なことに ...

続きを読む

community ja

南米の日本語版クレオール語「コロニア語」・「海外」という言葉の島国感覚 ー その1

慣れるのに3カ月かかったコロニア語

バブル真っ最中の1991年の暮れ、東京で東証二部上場企業に勤めていた私は、何を血迷ったか、邦字紙で働き始めようと思い立った。

ブラジルの邦字紙「パウリスタ新聞」東京支社の面々と面接を受けた時、「日系社会の人は、みんな日本語をしゃべるから、最初はポルトガル語が分からなくても大丈夫だよ」との説明をうけ、安易にそれを信じていた。

だが、その期待はみごとに裏切られた。1992年4月にサンパウロに到着。それから日系社会で使われる日本語方言「コロニア(日系社会)語」に慣れるのに、正直言って3カ月かかった。

だいたいブラジルのことを「伯国」と表記するが ...

続きを読む