デカセギ・ストーリー

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。

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第二十九話 デカセギの歌

エリックとエミリーは双子の兄妹。5歳のときに両親が離婚し、父親がふたりを引き取った。その2年後、父親が日本へ働きに行くことになり、父方の祖父母がブラジルでふたりの面倒を見ることになった。

祖父は日本食品店、祖母は美容室をそれぞれ営んでいたので忙しかったが、エリックとエミリーは愛情たっぷりに育てられた。

日系二世の祖父母は日本の歌が得意で、エリックとエミリーは小さい頃から日本の童謡や歌謡曲を歌っていた。

エミリーは地元のちびっ子のど自慢大会に出たこともあったが、エリックの方は、本番になると動けなくなるほどパニック状態になってしまうので、人前で歌うのは無理だった。

ふたりは、毎年、父親が休暇を取ってブラジルに戻って来るのを楽しみに待っていた。小学生の頃は、日本のおもちゃとか色鉛筆とかゲームを貰うのが楽しみだったが、中学生になるとお土産より父親と一緒に出かけるのを楽しみにしていた。

積極的なエミリーは父親に「ショッピングへ行こう」と言って、洋服やアクセサリーをたくさん買ってもらい ...

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第二十八話(後編) 27年ぶりの里帰り

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シバタ・マサヒロ、46歳、日本での生活は25年。生まれ育ったプレジデンテ・プルデンテに戻ったのは27年ぶり。

町は思っていたより変わっていなかった。「自分のことなど覚えている人なんて、もう居ないだろう」と思いきや、誰かが声をかけて来る。

「あんた、わしのこと覚えてる?キヨシのばあちゃんだよ」

「まぁ、ちっとも変わっておらんね!」

「『ファミリア』も一緒?」

「どう?プルデンテはあれから変わったでしょう?」

「日本の方と結婚したんですってねぇ?おめでとう!」

「あんた ...

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第二十八話(前編) 27 年ぶりの里帰り

「マッサが帰ってくるんだって!」

「えっ!?シバタさんとこの?」

「そう。三男のマサヒロが帰ってくるんだって!」

「何年ぶりかしら?」

「20数年かねぇ?」

マサヒロが生まれ育ったプレジデンテ・プルデンテを後にしたのは1990年5月頃、19歳だった。

子どもの頃は、両親と兄二人、家族5人で暮らしていた。学校の帰りには友達と原っぱでボールで遊んだり、凧をあげたり、自分の家にみんなを誘いおばあちゃん自慢のぼた餅を一緒に食べたり、夜は母親とテレビを見たりした。とても幸せな日々だった。

しかし、マサヒロは8歳の時、人生最初の転機を迎えた。母親が病気で亡くなってしまい、なにもかも変わってしまったのだ。

当時、父親は洗濯屋を営んでいて ...

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第二十七話(後編) 天からの贈り物

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ひらりちゃんへ

こんにちは。徳永涼子です。おばあちゃんです。

突然でびっくりしたでしょう。全然お返事しなくて、本当にごめんなさい。

ひらりちゃんが書いてくれた手紙(全部で22通)は全部読みました。写真もクリスマスカードも、大切にしまってあります。おばあちゃんの宝物になっています。

どうして、今まで一度も返事してくれなかったのかと聞きたいでしょう。

ごめんね。いろいろあったんです。まず、ひらりちゃんのお父さんのレオが事故で亡くなった後、立ち直るのにすごく時間がかかったからです。さらに、その間に大変な出来事がいろいろと起こったのです。

お父さんがお店のお手伝いをしてくれていたのは知っていると思うけど、大分前からうまくいってなくて ...

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第二十七話(前編) 天からの贈りもの

わたしの名前は「ひらり」です。珍しくて、いい名前ですって?みんながそう言ってくれます。なんで「ひらり」って?

ママが選んでくれました。日系ブラジル人のママは高校を卒業して、すぐに日本へ出稼ぎに行きました。どうしても大学へ進みたかったので、2年ほど日本で働いて学費を作り、ブラジルで大学へ行くつもりでした。

ブラジルの田舎町で生まれ育ったママにとって、日本の都会の生活は、喜びや期待、不安、そして、戸惑うこともありましたが、人生で一番楽しい時期だったと今でも言っています。

まず、ママが日本でハマッタのは、テレビドラマでした ...

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