第三十五話 ようやく、にっぽん!
両親が出会ったのは24年前。9歳のときから家族と日本で暮らしていた母は、親戚の結婚式に出席するためにブラジルに戻ってきていました。父は、新郎の親友で、めったに着ないスーツ姿で式に参加していました。
ふたりとも一目ぼれだったかどうかは、はっきりとは分かりません。「パッと見たときの印象がとても良かったのよ」と、母が照れて言うと、父は「着ていたキラキラのスーツのせいかもな」と。
当時、母は20歳。横浜のデパートの化粧品売り場で働いていて、いろいろ習い事をしていました。26歳の父は、両親と祖母と弟と2人の妹とサンパウロで暮らしていて、大きな自動車修理店を経営していました。
出会ってから半年後、二人はブラジルで結婚しました。両親の当初の計画は2年以内に日本で暮らすことでした。母は ...