Ryusuke Kawai

ジャーナリスト。慶應大学法学部卒。毎日新聞記者などを経て独立、ノンフィクションを中心に執筆。『大和コロニー「フロリダに日本を残した男たち」』(旬報社)、『「十九の春」を探して』、『122対0の青春』(共に講談社)など著書多数。日系2世の作家、ジョン・オカダ著『No-No Boy』の翻訳を旬報社より出版。『大和コロニー』は、「Yamato Colony: The Pioneers Who Brought Japan to Florida」として、University Press of Floridaより英語版が出版。

(2018年3月 更新)

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第8回 パールハーバーの波紋~序文から読む

アメリカのオバマ大統領が広島を訪問することが明らかになった。日米開戦によって複雑な立場に置かれたアメリカの日系人は、このことをどんな思いで受け止めたのだろうか。

振り返れば、開戦後に収容所へ送られたこと。そのなかからアメリカ軍の軍人として戦地に赴いた多くの人がいたこと。少数ではあったがアメリカへの忠誠を拒否した人もいたこと。日本とアメリカの間で多くの日系人が生活を、そして心を揺さぶられた。

すべては1941年12月7日(日本時間では8日)、日本軍によるハワイのパールハーバー攻撃からはじまった。

「ノーノー・ボーイ」は、主人公イチローの物語がはじまる前に、その背景を語る序文がついている。開戦直後の日系人をとりまく社会の混乱や日系人の反応を、いくつかの事例(フィクション)によって読者に示している。

序文はこうはじまる。

「DECEMBER THE SEVENTH ...

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第7回 ジョン・オカダの歴史

「ノーノー・ボーイ」の著者、ジョン・オカダとはどのような人物なのか。プロフェッショナルな作家として有名だったわけではなく、彼について残された記録は多くはない。

その経歴については、ルース・オゼキによる新版の序文のほか、昨年出版された「Art, Literature, and the Japanese American Internment: On John Okada's No-No Boy」(Thomas ...

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第6回 新版の序文から

一昨年アメリカで出版された、新版の「No-No Boy」には、これまでになかった新たな序文がつけられた。1957年のオリジナルは小説のみで、1976年の復刊にあたっては、そのいきさつなどをまとめた序文とあとがきが加わり、新版でさらに新版用の序文がついたことになる。

解説的に後ろにまとめて掲載されるのではなく、これだけいろいろなものを前後につけて構成されると、小説としては読みにくいと思われるかもしれない。しかし、新版にあたっての新たな序文がこの作品の今日的な意味を説き、また新たに明らかになったこともあり、その意義はあるだろう。

序文を書いたのは、日系アメリカ人の女性作家のルース・オゼキ(Ruth Ozeki)である。2013年に発表した小説「A ...

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第5回 新版がアメリカで一昨年出版

表紙に描かれた主人公の苦悩

初版はまったく注目されなかった「No-No Boy」は、1976年に復刊された。以来読み継がれ、版元のワシントン大学出版では13回版を重ねて累計で10万部以上を出版している。この間、ずっと同じ表紙で同じ内容だったが、一昨年新たな序文を加え表紙も一新した新版が出た。

ボブ・オノデラの手によるこれまでの表紙のイラストは、一見何をあらわしているのかわからないが、よく見ると人間の顔のようで片方の目は星条旗が、そしてもう片方には旭日旗が小さく描かれている。小説の主人公イチローの目だと類推できる。

赤色の「NO-NO BOY」という字体は、アメリカ軍の戦車などに使用されるアーミー・ステンシル・フォントで、これも内容を暗示している ...

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第4回 日本での出版

1979年、中山容氏が翻訳

小説「ノーノー・ボーイ」がアメリカで復刊されたのが1976年。それから3年後の1979年3月、日本語で翻訳が出版された。出版社は海外の文芸作品の翻訳など個性的な作品を手がける晶文社(東京都千代田区)で、中山容氏が翻訳を手掛けた。

翻訳のタイトルは「ノー・ノー・ボーイ」と表記され、「時は1945年、徴兵を拒否して二年間の刑務所ぐらしを終えて、故郷のシアトルに戻ってきたイチロー。自らの生き方を求めて激しく悩み、傷つきながら彷徨する魂の姿を、叩きつけるようなリズムで描き切った、日系アメリカ人二世による白眉の青春小説」という紹介文が添えられた ...

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