Ryusuke Kawai

ジャーナリスト。慶應大学法学部卒。毎日新聞記者などを経て独立、ノンフィクションを中心に執筆。『大和コロニー「フロリダに日本を残した男たち」』(旬報社)、『「十九の春」を探して』、『122対0の青春』(共に講談社)など著書多数。日系2世の作家、ジョン・オカダ著『No-No Boy』の翻訳を旬報社より出版。『大和コロニー』は、「Yamato Colony: The Pioneers Who Brought Japan to Florida」として、University Press of Floridaより英語版が出版。

(2018年3月 更新)

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第6回 新版の序文から

一昨年アメリカで出版された、新版の「No-No Boy」には、これまでになかった新たな序文がつけられた。1957年のオリジナルは小説のみで、1976年の復刊にあたっては、そのいきさつなどをまとめた序文とあとがきが加わり、新版でさらに新版用の序文がついたことになる。

解説的に後ろにまとめて掲載されるのではなく、これだけいろいろなものを前後につけて構成されると、小説としては読みにくいと思われるかもしれない。しかし、新版にあたっての新たな序文がこの作品の今日的な意味を説き、また新たに明らかになったこともあり、その意義はあるだろう。

序文を書いたのは、日系アメリカ人の女性作家のルース・オゼキ(Ruth Ozeki)である。2013年に発表した小説「A ...

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第5回 新版がアメリカで一昨年出版

表紙に描かれた主人公の苦悩

初版はまったく注目されなかった「No-No Boy」は、1976年に復刊された。以来読み継がれ、版元のワシントン大学出版では13回版を重ねて累計で10万部以上を出版している。この間、ずっと同じ表紙で同じ内容だったが、一昨年新たな序文を加え表紙も一新した新版が出た。

ボブ・オノデラの手によるこれまでの表紙のイラストは、一見何をあらわしているのかわからないが、よく見ると人間の顔のようで片方の目は星条旗が、そしてもう片方には旭日旗が小さく描かれている。小説の主人公イチローの目だと類推できる。

赤色の「NO-NO BOY」という字体は、アメリカ軍の戦車などに使用されるアーミー・ステンシル・フォントで、これも内容を暗示している ...

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第4回 日本での出版

1979年、中山容氏が翻訳

小説「ノーノー・ボーイ」がアメリカで復刊されたのが1976年。それから3年後の1979年3月、日本語で翻訳が出版された。出版社は海外の文芸作品の翻訳など個性的な作品を手がける晶文社(東京都千代田区)で、中山容氏が翻訳を手掛けた。

翻訳のタイトルは「ノー・ノー・ボーイ」と表記され、「時は1945年、徴兵を拒否して二年間の刑務所ぐらしを終えて、故郷のシアトルに戻ってきたイチロー。自らの生き方を求めて激しく悩み、傷つきながら彷徨する魂の姿を、叩きつけるようなリズムで描き切った、日系アメリカ人二世による白眉の青春小説」という紹介文が添えられた ...

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第3回 復刻版にこめられた熱い思い  

3月12日、シアトルのワシントン州日本文化会館で、「ノーノー・ボーイ」に関するシンポジウムが開かれる。第二次大戦中にアメリカの日系人が収容所に入れられた際に問われたアメリカ国家への忠誠に対する質問の意味をはじめ、日系人社会の反応など、小説の背景にある問題を研究者らが語り合うという。

シンポジウムは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校アジア系米国人研究部のプログラムの一環として行われるというが、いまもって「ノーノー・ボーイ」に象徴される世界は、文学だけにとどまらず、考察されつづけるテーマになっていることがわかる。それだけにこの小説も読み継がれているのだろう。


オカダの影を追って

話題になることもなく埋もれてしまった初版から19年経った1976年にアジア系アメリカ人の若者の手によって復刊されたジョン・オカダの「ノーノー・ボーイ」は、その後ワシントン大学出版が版元を引き受け出版を継続した。

1957年の初版は ...

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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第2回 再発見された“我々の文学”

アイデンティティの問題などを鋭く問うジョン・オカダの小説「ノーノー・ボーイ」は、1957年に出版されたのち、世間の注目を浴びることなくほぼ忘れ去られてしまった。それが70年代に入り見直されることになる。

そのいきさつについて触れる前に、昨今のアメリカをはじめ世界各地での移民や民族間、国家・文化間に生じている摩擦や問題からみて、「ノーノー・ボーイ」を考察する意味をひとこと触れておきたい。


いま、なぜ「ノーノー・ボーイ」なのか

大統領選がはじまったアメリカでは共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏らがイスラム教徒への偏見、差別を助長しかねない言動に出ている。これに関連して戦時中の日系人の隔離政策を是認する発言をし ...

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