「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第18回 第十章、人種差別に向けられるオカダのなまざし

アメリカのなかの日本人と黒人
日系人はアメリカ社会ではマイノリティーであり、移民当初から人種的な偏見にさらされてきた。同じようにマイノリティーとして中国をはじめアジア系のアメリカ人やユダヤ人、メキシコ人、ネイティブアメリカンも差別や偏見に遭ってきた。
こうした人種の問題について、オカダは、イチローの目を通して語っている。そのなかでも黒人に対しては、複雑な思いを寄せているのがわかる。
第一章のなかでまず、シアトルに帰って来たイチローは、かつての日本人町の繁華街で黒人から「ジャップはトーキョーへ帰れ」と、罵声を浴びせられる。この声を、オカダは迫害されてきた者たちが今度は別の者を迫害するという。
だが、あとの章では、日本人よりもっとひどい差別を受けている話をとりあげて、黒人に同情の目を向ける。おなじ差別される者のなかでも、さらにその枠の外に黒人がいるといった位置づけのようだ ...