en

culture
日系アメリカ人による小説をはじめ、日系アメリカ社会を捉えた作品、あるいは日本人による日系アメリカを舞台にした作品など、日本とアメリカを交差する文学作品を読み、日系の歴史を振り返りながらその魅力や意義を探る。
時代は1950年代から60年代、舞台は南部ジョージア州や中央部のアーカンソー州など。そこで日系人の家族がどんなふうに暮らしていたのか、子供たちは自分たちのことをどう思い、周りの人や景色をどう感じていたのか。
日系アメリカ人女性作家、シンシア・カドハタの小説『七つの月』、『きらきら』は、他の日系人作家の作品にはあまり見ることがない世界が描かれている。また、小説のテーマも戦争や収容所にかかわる日系アメリカ人の苦悩やアイデンティティーとは離れている。
日系アメリカ人の歴史のなかでも、あまり語られることがなかった地域の話だ。もちろん、これらはフィクションなのだが、そのベースとなっているのは、著者自身の生い立ちや経験である。
カドハタの父方の両親は移民一世で、カリフォルニアで小作農をしていた。父親は若いころセロリ農場で働き、あまり学校には行っていなかった。その後陸軍に入り ...
古い日系人コミュニティーのあるシアトル。かつての日本町は、いまはインターナショナル・ディストリクトといわれ、チャイナタウンに少し日本町が入り混じったような街になっている。
通りの名称を記す標識も、英語だけでなく、近年日本語と中国語による表記がされ、この地区全体の歴史的な遺産を残そうという市の考えが読み取れる。永井荷風の「あめりか物語」にあるように、明治時代の終わりごろには日本そのもののような町が移民によって形成されていたが、それも戦争を挟んですっかり形を変えて、日本の影は少なくなった。
それでも、有名なスーパー「宇和島屋(Uwajimaya)」をはじめ、ところどこ日本食レストランや土産物屋など、日本的なものは残っている。そのなかのひとつが「パナマホテル(Panama ...
年齢を重ねていけば誰しも過去を振り返るようになる。自分がどこから来たのか知りたくなったり、どうして今の自分が今のようになったのかを考えたりするときがある。自分の親や祖父母のたどった過去が気になってくる。
『カブールの園』の主人公はカリフォルニアで暮らす日系三世の女性レイ(玲)。幼いころ虐められ、差別されたことによるトラウマを抱え、母親との関係に悩む彼女が、あるときマンザナー収容所跡を訪ねたことから母親との関係を修復し、日系である自分自身を受け入れていく物語だ。
作者の宮内悠介は、この作品を月刊文学界の2016年10月号に発表、今年一月文芸春秋社から出版、芥川賞候補作となった。惜しくも落選したが、このほど第30回三島由紀夫賞を受賞した。
宮内は、これまでに『盤上の夜』で第33回日本SF大賞を受賞(2012年)、『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞を受賞 ...