ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2023/7/26/tanabata/

ロサンゼルス七夕フェスティバルを牽引する米澤義人さん

継続望むが問題は人手不足

毎年8月開催のロサンゼルスの日系社会最大の祭り、二世ウィークフェスティバルで、2009年以降、会場のリトルトーキョーを訪れる人々の目を楽しませてきたのがロサンゼルス七夕フェスティバルの七夕飾りだ。本場、仙台から送られる大きな飾りは、日系社会の人々のルーツの国である日本の夏祭りを思い起こさせてくれる。

最初にロサンゼルスの七夕祭りを取材したのは開催2年目の2010年のことだった。フェスティバルを前にロサンゼルスに駆けつけた仙台市の鳴海屋紙商事の六代目、鳴海幸一郎さんと、同社七夕企画室の山村蘭子さんが、現地の日系社会のボランティアに七夕飾りの作り方を熱心に指導していた光景が、今も懐かしく思い出される。その時にも、当時の宮城県人会長だった米澤義人さんは、故郷宮城県の七夕祭りをロサンゼルスの人に披露するため、仲間たちと共に一心に飾りを制作していた。

そして、13年後の今年7月、米澤さんは、1カ月後の七夕フェスティバルにロサンゼルスから出展する日米の国旗をあしらった飾りを製作するため、日米文化会館内のパイオニアセンターでワークショップを実施していた。

パイオニアセンターでボランティアと飾りの制作中。中央は夫人の米澤純子さん。  

「コミュニティーの皆さんのおかげで、ロサンゼルスの七夕祭りを今まで続けることができました。コロナ禍の間も日本から大きな飾りを送ってもらい、文化会館の前に飾ったり、またニューヨークのNBC(チャンネル4)に依頼されて、東京オリンピックの開催を機に日本の文化を紹介する目的で飾りを送ったりしていました。実は、二世ウィークの舞台となっているリトルトーキョー以外のエリアからも七夕飾りを飾りたいというリクエストはいくつもいただいています。でも、始まりが日本人街(リトルトーキョー)でしたから、今のところは引き続きここで開催していく予定です」。

複数箇所で開催することが難しいのは、人手不足もその原因として挙げられる。

「フェスティバル前はワークショップを開催して、(仙台から送られる飾り以外に)ロサンゼルスから出す飾りもボランティアで制作するのですが、コロナ禍以降、協力してくれるボランティアの数が減ってしまいました。私自身は昨年、30年務めた宮城県人会の会長の職を次の方に譲りました。しかし、こちらの七夕祭りの方は今のところ、次を引き受けてくださる方が決まっていません。私はすでに93歳です。昨年の段階で『もう今年はできない』と二世ウィークフェスティバルの方に申し上げたのですが、慰留されました。その結果、昨年、そして今年も引き続き(実行委員長を)務めています」。

人種超えて伝えた感動

最初は、可能ならば宮城県出身者にロサンゼルスの七夕祭りを引き継いでくれれば助かるという気持ちもあった米澤さんだが、今はどのようなバックグラウンドでも、責任を持って祭りを今後も継続させる情熱がある人なら喜んで譲りたいと語る。

「ロサンゼルスの七夕祭りを今後も続けていけるかどうか、日本の(仙台の)人たちも心配しています。実はコロナが明けて日本に行った時に、山村さん(前述)にも会ったのですが、彼女もすでに91歳。『ロサンゼルスに七夕祭りを見に行きたいけれど、体力的にもう行けません』と話していました。93歳の私を見て、山村さんから『元気ですね』と言われましたが、実はそれほどもう元気ではありません。私の跡を継いでくれる人がいたら、きちんと日本にも『見つかりました』と連絡してあげたいと思っています」。

米澤さんに2009年からロサンゼルスの七夕祭りに携わってきて、最もうれしかったことは何だったかを聞くと次のように答えた。

「(飾りを)見る方が喜んでくれているのを見ると、本当に報われたような気持ちになりましたね。しかも、日本人や日系人だけでなく、いろいろな人種の人が感動してくれることがうれしかったです。見るだけでなく、過去のワークショップにはヒスパニック系の人やアフリカ系の人、いろいろな人種の人が参加してくれていました」。

また、新しいリーダーが見つかった後も、米澤さんは完全に引退するつもりはなく、できることはサポートしていきたいと話す。「顧問という立場で? いやいや、そんな肩書きは全く必要ありません。とにかくヘルプしたいという気持ちはあります」。

今年の七夕フェスティバルは8月11日からの開催だが、8月8日に飾り付けを開始するため、その司令塔としての役割も米澤さんの肩にかかってくる。本場仙台から送られた飾り以外にも、パイオニアセンター、北米沖縄県人会、NALC、倫理研究会など在ロサンゼルスの団体による飾りが披露される予定だ。

* * * * *

第15回ロサンゼルス七夕フェスティバル

2023年8月11日―20日
(リトルトーキョーの全米日系人博物館の館内と周辺で開催)

 

参考

米澤さんにディスカバー・ニッケイで過去に取材した記事:
絆:ニッケイ・ストーリー ~東日本大震災から~ 東日本大震災から3年: 南加宮城県人会の米澤義人会長に聞く」その1&(2014年3月3日、10日)

ロサンゼルスの七夕祭りに関する過去の記事:
七夕飾りのワークショップに本場仙台から来羅府」(2010年6月3日)

© 2023 Keiko Fukuda

フェスティバル 県人会 ロサンゼルス七夕フェスティバル 宮城県人会 米澤義人
執筆者について

大分県出身。国際基督教大学を卒業後、東京の情報誌出版社に勤務。1992年単身渡米。日本語のコミュニティー誌の編集長を 11年。2003年フリーランスとなり、人物取材を中心に、日米の雑誌に執筆。共著書に「日本に生まれて」(阪急コミュニケーションズ刊)がある。ウェブサイト: https://angeleno.net 

(2020年7月 更新)

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