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Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity

ドラマ『99年の愛』-学生の反応

(編集者注:本稿は、シアトルで行われた全米日系人博物館による全米カンフェレンス『Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity』での日本語セッション「99年の愛/憎しみ(99 Years of Love / Hate)」(2013年7月6日)で発表された原稿です。同セッションの飯野正子先生(作成の背景)、島田法子先生(時代考証)の発表もご覧ください。)

『99年の愛~Japanese Americans~』は、東京ドラマアウォード2011の「単発ドラマ部門」で受賞しました。受賞を記念して再放送も行ったようです。視聴率は、第一夜は12%程度でしたが、徐々に上がって、最終夜は20%に迫り、瞬間最高視聴率は、23.8%。毎回2時間、5夜連続、高い視聴率を獲得するには不利だと思える放映形式ながら、かなり高い視聴率を獲得したといえます。TBSは「TBS開局60周年 5夜連続特別企画 『99年の愛〜JAPANESE AMERICANS〜』最終夜に19.1%の高視聴率を獲得!! 11時間にも及ぶ5日間の平均視聴率も15.4%!!」と総括しました。そして、「テレビ史上かつて例のない規模で放送し、大きな感動を呼んだ」作品であり、「記憶にも記録にも残ることになったこのドラマは、今後のドラマ界の大きな指針になるであろう」と自画自賛しています。

グーグルで「99年の愛」、「視聴率」、「感想」いう言葉で検索したところ、F-castテレビドラマ視聴率感想というサイトが見つかりました。

ある人は、「祖父母の兄妹が日系移民一世です。今は祖国日本のお墓に眠っています。先日アメリカから突如二世三世が一家総出で墓参りに訪れました。高齢で勿論日本語も話せない人達ですが、日本の親戚を頼らず自分達で全て手配して来たのです。そのバイタリティーとおおらかさ、明るさそして苦難を共に乗り越えてきた親との 絆の深さに感動しました。その時思い出したのが、橋田壽賀子さんのドラマ『ハルとナツ~届かなかった手紙』です。『渡る世間ー』は苦手ですが、橋田さんが 遺言として書かれたドラマ、そして主演が草なぎ剛さんならば、きっと素晴らしい作品になると信じています」という期待が寄せられていました。草彅ファンからの書き込みでしょうか。実際の反応も彼のファンからの書き込みが多かったです。

反対に全米日系人博物館のボランティアの方は、「このドラマの発表があったときには本当にビックリしたのと同時に大変不安に思いました。日系人の話は、本当に背景が複雑で、単なるお涙ちょうだいモノのドラマにもしてほしくないし、面白おかしく取り上げてもらいたくもありません。日系2世は、日本人の顔をしていますがアメリカ人であり、日本人じゃありません。それなのに、公式サイトに書いてあった『日本を知らずに生きるしかなかった』という文言に、ああ何も分かってない人たちが作るんだとがっかりしました。ほとんどの2世が日本語を話せません。その2世の役をなぜ日本人がやるんだろうとかなり疑問に思っています。このドラマが間違った認識を日本の方に与えないかどうか、今から不安で仕方ありません」と、強い不安を書き込んでいます。

ドラマでは日系人の歴史を「おもしろおかしく」取り扱ってはいないと思いますが、この方が不安に思っているいくつかの点は、ドラマを見た学生からも指摘されています。

また、実際にドラマを見た人からの書き込みでは、日系部隊の活躍に感銘し、感涙を流した方もいたようです。そして家族愛のドラマとして高く評価する声がありました。批判はほとんどなかったと思います。

続いて学生の反応に入ります。今回、ここで発表することになり、慌てて、授業に取り上げることをシラバスに書き込みました。白百合女子大学ではグローカル文化研究Hという学部二年生から四年生対象の半期の講義科目、授業概要は、「日本人がアメリカ合衆国に集団移住してから140年余、日系アメリカ人が日米戦争をきっかけにアメリカ合衆国の内陸部に強制退去・収容されてから70年。今日では日本人が海外に出稼ぎに出た歴史は忘却されていますが、日系アメリカ人の強制収容体験はさまざまなメディアに取り上げられるようになりました。本年度は、日系アメリカ人に焦点をあてて、かれらの体験がどのように語り継がれているのか、ローカルな活動と、グローバルな展開を考えてみます。主な教材は、カリフォルニアの中高のテキスト用に作られた視覚教材、ハリウッド映画などを使用します」として、90分授業で二回取り上げました。1回目では歴史的背景、2回目は10時間ドラマを80分で見せました。また、TAを使って、昼休みに全部を上映しましたし、またDVDを図書館にも入れました。

津田塾大学の四年セミナーでも「人種・エスニシティに関する基本概念と理論を学び、ついで各種統計からアメリカ合衆国の現在の状況を調べます。また事例として日系アメリカ人強制収容に関する小説や映像資料を分析し、エスニックアイデンティティの生成と変容を探ります」として、2回分取り上げました。最初に80分短縮上映し、2回目にディスカッションしました。そして、授業の最後に感想文でよいので、翌週迄に提出するように求めました。白百合の学生は、32名受講者のうち15名、津田は16名の受講者のうち半数の12名が提出しました。

最初に、母数が少ないのですが、全体の割合についてお話しします。

記述式ですので、複数の内容にまたがっていますが、「99年の愛」が視聴者に伝えたかったことについて書いてもらいました。一番多かったのが、人種差別の問題、放火されたり、レイプされそうになったりしたことへの衝撃が強かったようです。続いて日系人の苦闘、その次に戦争の問題、家族愛、逆境に負けないというメッセージが同数でした。

続いて、歴史ドラマとしての評価では、「評価できる」と考えた学生が、評価できない、疑問が残ると回答した学生を若干上回りました。他のドラマと比較するとどうか、という問いに対しては、日系人のドラマを知らない学生がほとんどでした。

個別意見に移ります。授業で取り上げたという点もあってか、「日系人について知ることができた」という意見は多く、「この作品で初めて多くのことを知った」とか、「アメリカに移民した日本人と日系人収容所についてより深く知ることができました」という意見がありました。

日系人の頑張りに関しては、「ドラマからは、移民したアメリカで奮闘する日系の農場経営者や季節労働者、一家を支える主婦、学生などの生活の様子が伝わってきました」とか、「アメリカに住み始めた最初の日本人たちが、とても苦労しながら広大な土地を耕し畑を作って、協力しながら暮らしていたことを知って、すごいなと思いました」と、感銘したようです。

歴史ドラマとしては、「多少の誤りがあって良いのがドラマであると思う。私はこのドラマで、アメリカと日本による過去を知ることができたし、泣きたくなるほどの感動を得た」と述べ、「フィクションなのだから多少間違っていてもいいのではないか、感動を得たのだから」と述べているように、おおむね評価しています。私が授業で、史実と異なる点を数多く指摘した後の感想なので、もっと批判的意見が多いかなと思っていましたが、感動するドラマだからドラマとして成功していると見なしているようでした。

最後の意見では、「反米感情をあおるような強烈シーン、例えばレイプや『ジャップ』に対するひどい差別を入れつつも、親日的なアメリカ人を適度に登場させたり、どちらかの国に偏ったものを作らないようにしていると、アメリカに配慮した作りになっているのではないか」と考える学生もいました。

また、「このドラマが最初から最後まで事実に基づくものであるかということはさておき、日系人に対する差別が存在していたのは事実です。こうした過去を振り返り、日米間に何があったかという過去の事実を共有することはとても重要であると思います。こうした過去があり、日系人の戦争での活躍があったからこそ、日系人や日本人が認められるようになっていき、そして日米間の関係も現在では友好なものになっていったのだと思います」といって、差別があった過去を過去としてきちんと認識するのが重要だという意見もありました。

人種差別、日系人の差別に関しては、衝撃を受けたようです。それでも、「日本人も差別されていたことを知って、改めて世界の差別などを考えることが出来ると思った」とか、「アメリカの国籍をもち、アメリカに住むことを望む日本人に対してこのような差別があったことを知り、とても悲惨な思いがした。人種差別がどれだけ残酷で人間の心と体を苦しめるかを思い知らされた」とか、「現在の日本は、沢山の移民や出稼ぎ労働者を受け入れる側になっています。ドラマを見て、私たちは、一郎の家族が受けた差別を酷いと思いましたが、今、我々が差別する側になっていないか考える必要があり、このドラマはとても良い教訓になったと思います」という意見を読むと、学生の感性のすばらしさに私自身が感動しました。

日系人の歴史がよく描かれていると思う一方で、橋田壽賀子の朝ドラ『おしん』のような「成功物語」ではないかと思う意見もありましたし、『渡る世間』的な大衆ドラマだと見る意見もありました。

また、日本人が作ったことで無理があるのではないかという意見もありました。日本人の視点が強すぎるのではないかという意見も多かったです。例えば、「この作品は日本で生まれ育った日本人から見た『日系人』として描かれているような気がした。歴史的事実と異なる部分も存在し、困惑した」という意見があり、「日本人が脚本、監督の、日本目線のドラマだということをきちんと理解した上で観ないと反米感情を煽るだけになってしまうと思います」と日米関係を危惧する意見もありました。「Japaneseとしての性質(忍耐強さなど)の賛美という意図も含まれているように思われた。このドラマが日系人を日本人と同一視している視点から描かれていると感じたためである」という指摘は的を射ているでしょう。

また、「日系移民二世として宿命を背負った男として設定している。このような設定こそが、彼らに対する差別や偏見に繋がるのではないか」として、二世の描き方が悲劇の英雄的な、言い換えれば、「男性版おしん」なのではないかという意見もありました。

さらに、「白人の登場人物がステレオタイプ的な性格をしており、ほとんどが日系人に敵がい心を向ける画一的な悪役として描かれていた。このドラマを見た人々は、日系人=被害者、白人=加害者という固定的なイメージを持つだろう」と、危惧する意見もありました。先程、親日的な白人が適度に出ているという意見とは対照的です。

また、日本人と日系人の区別が曖昧だという指摘に関しては、二世の一郎の英語や日系四世の子供の英語についても、英文学科の学生だけに、お粗末だという意見もありました。その他として頑張り屋の長吉があっさり自殺したり、一郎の出征に対する父親としての気持ちなど、描かれていないという意見もありました。

それでも、「日系人たちのアメリカでの地を這うような日々があったからこそ今の日米関係があるのだと言っても過言ではない」とか、「フィクションですが、背景はノンフィクションですよね。あんな時代を経てあのような方たちが辛い思いをして作り上げた歴史があったおかげで私がアメリカで生活していた80年から85年の5年間は何の差別もなく本当にアメリカ人には優しく接してもらえたし、いい思い出しかありません。あんな差別されていた時代があったことにびっくりしました。そして戦争は本当に嫌なものだと改めて痛感しました」という、卒業生のメールに、日系人の苦労のおかげで、今日の日米関係があり、日本人がアメリカでいやな思いをせずに暮らせるのだ、日系人のおかげということがわかったという意見があって、このドラマには問題もあるだろうけれども、日系アメリカ人の歴史と存在を日本人が知るという点で意義はあったのかと思います。

ご静聴ありがとうございました。

 

*2013年7月4日から7日にかけて行われた全米日系人博物館による全米会議『Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity』についての詳しい情報はこちらをご覧ください。janm.org/conference2013

このセッションの発表を聞く(音声のみ)>>

 

 

© 2013 Teruko Kumei

99 Years of Love conference janm seattle Session: 99 Years of Love / Hate Speaking Up! TBS drama

About this series

日系アメリカ人の地位回復を果たした「市民自由法」制定25周年を記念して、全米日系人博物館は、2013年7月4日から7日にかけてワシントン州シアトルで、第4回全米会議『Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity』を行いました。この会議では、民主主義、正義、尊厳をテーマに、新しい見識、学術的論考、コミュニティの観点を紹介しました。

このシリーズでは、今回の会議で発表されたさまざまな視点からみる日系アメリカ人の体験談だけでなく、会議に参加した方々の反応などを中心に紹介します。

会議についての詳しい内容は、全米会議のウェブサイトをご参照ください>>