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グローバル国際社会と重国籍

2016年9月19日に行われた難民と移民に関する国連サミット(© 2016 国際連合)

昨年9月、日本の民進党所属参議院議員蓮舫氏の重国籍問題が日本世論を騒がせたことは記憶に新しい。この一件で、日本社会で重国籍に関する問題が大きく取り上げられたが、同時に日本国民の国籍選択への理解不足が露呈した。アイデンティティや法制度上の手続きなど様々な面で重国籍者が抱える悩みは多いが、日本社会においてその関心度は未だ低いままだ。

同一件は、東京都内在住の男性が、公正証書原本不実記載等未遂の罪で蓮舫氏を東京地検に告発、問題が発覚した。同氏は日本国籍と台湾国籍の重国籍者だったが、台湾籍を喪失した事実がないにも関わらず、外国籍の証明と誤信させる書面を添付し「外国国籍喪失届」を提出、戸籍簿に不実の記録をさせようとしたというものだ。

日本国籍法第14条は、重国籍者は原則22歳までに国籍選択を行うように定め、16条で日本国籍を選択した場合、外国籍の離脱に努めなければいけないと規定している。蓮舫氏は「17歳当時、父親とともに台湾籍の離脱手続きを行い受理されたと思っていたが、実際は手続きが未完了だった。当時の記憶も曖昧で、多くの方々に迷惑をかけてしまい申し訳ない」と謝罪。翌月、日本国籍選択の意思宣言となる「国籍選択届」を提出している。

毎年10月末に日本で開催される海外日系人大会。最終日に採択される大会宣言には、ほぼ必ず重国籍に関する決議案が含まれる。昨年の第57回大会も同様だった。

全7項目からなる決議の第6項は「重国籍者に柔軟な国籍対応を認めるよう日本政府に求める」だった。日本が重国籍者に対し原則22歳までに国籍を選択するよう定めていることに対し、「日本人として活躍したくても認められず、また日本人を親に持つ子供にとって日本人としてのアイデンティティを奪われ、幸福追求権が侵害されるケースがある」とし、「出生国や在住国の国籍を保持したままでも日本国民として認め重国籍の道を開くことを政府に求める」と主張している。 

日本人の母親をもつ日米の重国籍者だったある女性は、米国籍を選択したため、母親の戸籍上の彼女の名前にバツ印がつけられたという。

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重国籍者に対する対応の遅れは、日本社会に限ったことではない。2児の母でシアトル市在住のある女性は、昨年5月に盗難被害に遭い全ての身分証明書を失った。 

彼女の父親は米国人、母親は日本人で、日本で生まれ育ったが米国籍を選択、数年間中国で暮らした後、シアトルに移住した。彼女は身分証明書の再発行を申請したが、手元に身分を証明できるものがないため、手続きは頓挫したままだ。

「市民権証明書を発行してもらう手続きを行ったが、2カ月半待った後、送られてきたのは、父親が14歳から自分が生まれるまで米国に在住していたことを証明する書類の追加提出の指示だった。さらに、それらの書類を提出しても申請が受理されない場合、全てをいったん白紙に戻すと宣告された」と話す。

ID証明ができないため、不在票が入っていた荷物を郵便局から受け取るのも一苦労という。 盗難時に1,000ドルほど使われてしまった政府からの支援金を取り戻すこともできず、様々な手続きに時間をとられ思うように働くこともできない状況だ。盗難被害を証明するポリスカードを発行してもらったが、そのカードが役に立ったことは一度もないと嘆く。


アパート契約後から1週間後の被害だった。「手続き前に被害にあっていたら住むところさえない状況だった。英語が流暢ではないため、不審者のような扱いを受けることも多く、言葉の壁が一番大きいように感じる」と語る。 弁護士や移民・難民を支援する団体にも相談したが、いまだ効果的な解決策は見つかっていないという。

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米国は、重国籍者に対し、国籍選択を推奨はしているが、義務化はしていない。しかし、サポート体制もまた整っていない。国による奨学金制度の利用を望むが、国籍が理由で断念せざるを得ないという例は日米両国で聞かれるものだ。

国連によると、移民・難民の総数は世界で2億4400万人にのぼり、第二次世界大戦後では最多となった。ワシントン州の移民人口は約93万人、米国で10位の多さとなる。

昨年11月には、シアトル市は移民の積極的受け入れの続行を宣言した。また昨年12月には、ノースシアトルカレッジで市民権申請のための書類作成をサポートするワークショップがシアトル市主催で開かれ、325人の移民が参加した。同市は1月20日も関連行事を予定する。

昨年12月にシアトル市内で開かれた市民権ワークショップ。

重国籍者への対応は各国で異なるのが現状だが、国際社会のグローバル化が進んでいる現状では、問題解決のための議論も国際舞台で行われる必要がある。全ての人々が生活しやすい国際社会の構築が急務だ。

 

* 本稿は、2017年1月1日の『北米報知』(Vol. 72, Issue 1 & 2)からの転載になります。

 

© 2017 Akari Terouchi

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