ジャーナルセクションを最大限にご活用いただくため、メインの言語をお選びください:
English 日本語 Español Português

ジャーナルセクションに新しい機能を追加しました。コメントなどeditor@DiscoverNikkei.orgまでお送りください。

food

ja

ラーメンに続くかアメリカのうどん文化

「日本と同じうどんを」と渡米した元公務員

日本からロサンゼルスに移り住んだ25年前、まだ当地にラーメン文化は花開いてはいなかった。麺料理では蕎麦の店が数店、うどん店ではオーナーが変わった現在も営業しているガーデナの「さぬきの里」、他に東西プラザの「琴平」がオープンしていたかいなかったかという程度だったと思う。

故郷の大分県では、人々は蕎麦よりもうどんの方を食べていた。しかも関東の濃いスープではなく、薄い出汁。上京した18歳の時に食べたうどんは、それまで慣れ親しんだうどんとは別物だった。味が濃すぎて違和感しかなかった。

しかし、ロサンゼルスに来て讃岐の里で食べたうどんは、讃岐というだけあって、西日本のもの。私たちの地域のうどんに非常に近かった。それでも、知る限り、うどん店は長らくロサンゼルスで増えることはなく、ラーメン店だけが増えていった。

うどんの店として印象に残っているのは、2年半ほど前にリトルトーキョーのファースト・ストリート沿いに開店した「丸亀もんぞう」。アメリカ人ウケするウニクリームパスタなど独自の創造的なメニューが話題になり、週末には1日に500食も出るという繁盛店に成長した。

打ち立てのうどん(もんぞうで)  

もんぞうを手がけたマネージャーの瀬川晃さんの経歴はユニークだった。讃岐うどん発祥の地、香川の隣の徳島県に生まれ、建設省(現在の国土交通省)の香川県支所で働いていていた瀬川さんは、現場近くのうどん店を軒並み食べ歩いたそうだ。職場に「うどん愛好会」を立ち上げると、昼休みに自分で手打ちうどんを作って同僚に振る舞うようになった。それでも飽き足らず、うどんへの情熱が高まった挙句、うどん打ちの学校に入学した。安定した国家公務員の仕事を捨てたのだ。

卒業後はしばらくインターネットで生麺を販売する事業を手がけていたが、先に渡米していた弟のレストランビジネスを手伝うために海を渡った。その後、うどん店をロサンゼルスに開ける計画が持ち上がった。そこで、日本の生地に近くなるように材料の配合に試行錯誤した結果、2015年春、もんぞうの開店にこぎつけた。

話を聞いた2年前、瀬川さんは「わざわざ、うどんを食べに日本に旅行する人はいないでしょうが、日本の本場に行かなくてもアメリカで本物の讃岐うどんが食べられると思ってもらえたら嬉しい」と語った。本場の讃岐には行ったことがない私だが、元国家公務員が手間隙かけて打ったうどんは、コシがあって美味しかった。

うどんを打つ、もんぞうの瀬川さん  


カフェテリア方式の丸亀製麺、ソーテルに本土1号店を開店

丸亀製麺の肉玉うどん

もんぞうを体験する1年半前、ハワイで「丸亀製麺」のうどんを食べた。混同されやすいが、丸亀もんぞうと丸亀製麺とは別の会社だ。丸亀製麺は日本の上場企業トリドールが経営母体。公式ウェブサイトによると、世界12カ国に203店舗を展開している。ハワイには2店舗あり、私が行ったのはワイキキ店。店は宿泊していたホテルからクヒオ通りを挟んでちょうど向かい側にあった。部屋から見下ろすたび、店の前には長い行列ができていた。私も覚悟を決めて行列に並んだ。30分ほど待った後、注文カウンターの端にたどり着いた。最初に、ぶっかけうどんや釜揚げうどんなど好きなうどんを注文し、それを受け取った後、カウンターに並ぶ各種の天ぷらを自分で皿の上に取っていく。

お会計を済ませた後はトッピング自由のネギや天かすを加え、テーブルへ。うどんはのどごしよく、あっという間に完食した。しかし、感心したのは味だけではない。カフェテリア式で料理を受け取れるというスムーズさがなんと言っても快適だった。これはアメリカ人に受けるはずだ。テーブルで注文してから料理を待たされるということがない。ただし、行列に並んでいる間は待たされるのだが。

結局、滞在中に何度も足を運び、次の年のハワイ出張でも通った。その後は、日本でも丸亀製麺に食べに行った。ハワイと日本は、システムが同じだった。そして、ロサンゼルスのソーテルに丸亀製麺のアメリカ本土第一号店ができると聞いたのは、2016年の後半。2017年の頭にはオープンと聞かされていたが、いつの間にか時は流れ、最終的にグランドオープニングを迎えたのは2017年の9月だった。

カフェテリアスタイルの丸亀製麺ソーテル店の店内  

出店ロケーションのソーテルは日本食の激戦地だ。アメリカ人に大人気のつけ麺の辻田や回転寿司のKULA、ハウス食品が経営するカレーハウスもある。

グランドオープニング直前の試食会に足を運ぶと、ハワイでは記憶にないメニューがあった。それはミニ丼ぶりやアイスティー類。また、ビーフトマトうどんや豆腐サラダうどんなど、うどんの種類自体も、目新しいものがメニューに並んでいた。アメリカ本土は非日系をより意識したメニューになっているようだ。

試食会の2週間後、友人のリクエストで再びソーテル店を訪ねると、ハワイで見たような長蛇の列ができていた。

ラーメン店はすでにロサンゼルス近辺では飽和状態だ。これからはうどんの時代が到来するかも、と思いながらも、行列は避けたい。これは私の地元に店舗が多い「ウエストうどん」や「鳴門うどん」にもアメリカに進出してもらい、需要と供給のバランスをとるのが最善の策に思えるが、どうだろうか。

 

© 2017 Keiko Fukuda

california food Los Angeles marugame seimen udon