ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2015/12/16/david-yamashita/

第一回 デービット・ヤマシタさん(シアトル四世)

「四世のコミュニティーを盛んにしたい」と話すヤマシタさん。

地元社会への奉仕に協力する「シアトル四世」というグループが最近立ち上った。日系のルーツがある若い世代を中心に様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まる。

立ち上げたのはデービッド・ヤマシタさん。NVC財団の活動に関わるなど、日系社会でも積極的に活動を行うようになった。設立のきっかけは、第二次世界大戦や日系人収容所からシアトルへ戻った二世の経験を知ったことがきっかけという。

グループでの活動は、バスケットボールを通じたコミュニティーイベント開催、パイオニアスクエアにある退役軍人向けのホームレスシェルターでの毎週土曜日のブランチ提供といったものだ。

 「二世の人々は米国軍として戦ったにもかかわらず、帰還後の就職や、ローンを組むことが難しく、人種差別に直面しました。地域社会に歓迎されなかったため、お互いの結びつきが強まったようです」とヤマシタさんは語る。物理的にも心理的にも拠り所となったのが、今のNVC記念会館。そこでのコミュニティー活動を通じて二世に強い絆が生まれたという。

「二世である祖父母に、今以上に敬意を示せるように」とヤマシタさんは語る。二世たちの献身や犠牲により、ヤマシタさんら若い日系世代が社会的地位を築くことができた。「私たちは今、ほとんど差別に面することもなく生活することができています」

二世のおかげで――。忘れることは簡単だが、「忘れないでいたい」との強い思いがある。

第二次世界大戦の困難な状況下、それぞれの意思で行動を起こした二世。「彼らが起こした行動を考えると、元気付けられ、奮い立たされます」とヤマシタさんは語る。

二世と深くかかわるシアトル。彼らの遺産を残すために活動を続けることが貢献につながるという。

現在のメンバーは約20人。団体名は「四世」が入っているが、参加者は幅広いバックグラウンドを持つ。「他の人種の人にとっても日系人、二世の歴史は興味深いのではないでしょうか」と語る。

それでも「四世」というグループ名は、ヤマシタさんなりにアイデンティティーへの強い思いから来たものといえる。「四世には共通の絆があるということに気づいてほしい。二世の多くはシアトルに戻って再定住しました。三世はシアトルで育ちましたが、ベルビューやレントンなどシアトル郊外へ居を移しました。四世に関しては、さらに遠くへ引っ越した人も多いです」と語る。

可能な限り四世同士のつながりを保ちたい。「そうすることで、私たちが持つルーツを素晴らしい遺産として残し続けることができるのではないかと思います」

活動目標は2つあるという。1つは二世の復員軍人に敬意を払い、彼らの歴史を維持すること。2つ目は地域社会に貢献するため積極的に活動することという。

「二世」、「三世」といった言葉はよく聞くが、「四世」、「五世」は耳にする機会が少ない点を日系社会の現状として捉えている。「グループでの活動を通じて、より『四世』の認知を深め、四世のコミュニティーを盛んにすることができればと思っています」

シアトル四世の詳細はwww.seattleyonsei.comへ。

 

* 本稿は、2015年10月13日『北米報知』からの転載です。

 

© 2015 The North American Post / Fumika Iwasaki

デービット・ヤマシタ 世代 シアトル アメリカ合衆国 ワシントン州 四世 若者
このシリーズについて

19世紀後半に始まった日系移民も長い歴史を得て、四世、五世の活躍する姿も聞かれるようになった。シアトル郊外で活動する若い日系人が、アイデンティティーへの意識も含めて、どのような思いを持って社会活動をしているのか追ってみた。

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執筆者について

栃木県出身。津田塾大学3年生を終了後、2015年3月から2016年3月までの1年間、シアトルのベレビューカレッジへ留学。日本での専攻は、国際研究学科。多文化・国際研究に力を入れており、中でもマイノリティ・グループに興味を持っている。2015年には奨学金を取得し、ミニドカの巡礼に参加した。

(2015年9月 更新)

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