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米国で日本野菜普及に取り組む米田純さん

東日本大震災が転機に

山頭火ラーメンを米国に展開するFood’s Style USA社代表の米田純さん。彼から突然の連絡をもらったのは2020年の春頃だったと記憶している。私が以前書いた、南カリフォルニアの日本野菜農園についての「ディスカバーニッケイ」の記事を読み、農園の連絡先を問い合わせてきたのだ。それを機に米田さんとはSNSで交流するようになった。そして、2021年2月、東海岸デラウエア州のスズキファームの事業を米田さんの会社が引き継ぐことになったという投稿を見て、改めて彼がアメリカで何をやろうとしているのかに興味が湧いた。そして、2月のある朝、山頭火のボストン店にいた米田さんとのzoomを通じてのインタビューが実現した。

米田さんの前職は日本のプロ野球の球団代表だ。仙台に拠点を置く楽天イーグルスの代表を2004年から8年間務めた。その最中に、あの東日本大震災が発生した。「僕の中ではあの震災が転機になったほど、大きな衝撃でした。知り合いのご親族が亡くなったりもしましたし、僕自身も被災地にボランティアに駆けつけました。僕はイーグルスのグッズを配布していたのですが、(ラーメンの)山頭火の社長はそこで被災者にラーメンを提供していました。その時に1杯のラーメンがいかに人々に元気を与えるかということを実感したのです。改めて食べることの大切さを教えていただいた気がしました」。

転機となった東日本大震災後のボランティア活動の様子。

50歳を機に独立した米田さんは、挑戦する分野を食に決め、しかもその舞台をアメリカに定めた。「プロ野球時代から大リーグとのつながりがあって、何度もアメリカには来ていました。この国の広大さ、市場の可能性を感じていたので、山頭火のアメリカとヨーロッパの路面店の権利を取得し、最初にシアトル郊外ベルビューに店を出しました」。続いてシアトル市内、ボストン、バージニアと現在は5店舗を展開している。

ラーメンブームの勢いも借りて、山頭火のアメリカの路面店は順調に売り上げを伸ばしていたが、2020年3月、新型コロナのパンデミックの直撃を受けた。

「僕らレストラン業はイートインを前提にしたビジネスですから、ロックダウンは大打撃でした。とにかくテイクアウトとデリバリーを強化するしかないと、スマホのアプリのオンラインオーダーシステムを開発し早速導入しました。非接触で決済までできるということで、このシステムの効果を実感しました。さらに従業員が身に着けている前掛けやロゴ入りの丼などの販売をオンラインで開始しました」。

また、以前から顧客に登録してもらい、リワードなどを提供する会員システムを運営していたことも功を奏したそうだ。同システムのおかげで、山頭火のラーメンのファンである顧客と個人的につながり続けることができている。今後、ロックダウンが解除されても完全にはパンデミック前の状況には戻らないという前提で、これらの取り組みには引き続き力を入れていくと米田さんは話す。

アメリカ市場の消費力

さて、日本野菜の話だ。もともと、アメリカで日本の食文化を広める上で、米田さんはその材料である日本野菜の普及拡大も視野に入れていたと言う。

「川上にのぼって、生産者の立場としても日本食を広げていきたいと考えています。そこでパンデミックになる前から、全米の日本野菜の農園を10カ所見て回りました。その結果、事業継承という形でスズキファームとのご縁をいただくことになりました。スズキファームでは30種類ほどの野菜を栽培、敷地面積は東京ドームの約5個分、58エーカーに及びます。実は山頭火のベルビュー店の小林店長は、長野県の実家がりんご農家なんです。手を挙げた彼はすでに、スズキファームに入って常駐しています(笑)」。

スズキファーム前オーナーと握手する米田さん(左)

スズキファームの日本野菜のブランドは、東海岸には浸透している。米田さんのプランは、その生産物をオンラインで消費者に向けてより広範囲に販売することだ。

「東海岸の農園なので、販売先も東側の一部の地域に限定されますが、山頭火の店がボストンやバージニアにあり、それらの店舗の顧客に向けて販売することができます。食材を広めるためにも、それらの野菜を使ったレシピも提供していきます」。

その計画の先には、おそらく事業譲渡という形で米国各地に日本野菜の農園を開設し、東海岸だけでなく、より広い地域でオンライン販売を手がけるという、壮大かつ魅力的な未来図を米田さんは描いている。

50歳で日本の大手企業での安定した職と地位を捨て、異業種に参入し、新たな挑戦をアメリカで開始して7年目、アメリカという国に今何を感じているかを聞くと米田さんは、「想像以上にアメリカという国の人々の消費の力はすごい、ということです。さすがに、GDPでは日本の4倍もある国ですから。これからもアメリカの消費のパワーは安定し続けるでしょうし、そのパワーがある限り、僕も挑戦し続けます」と答えた。

 

山頭火のウェブサイト:https://santouka-usa.com

スズキファームのウェブサイト:https://stores.nihonyasai.com

 

© 2021 Keiko Fukuda

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