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サンバの国でキバランバ! ~ブラジル奄美移民100年の軌跡~

第6回 2世・3世の訪問団が奄美へ

鹿児島県人世界大会にて海外参加者記念撮影

2018年11月1日鹿児島で「鹿児島県人世界大会」が開催され、鹿児島にゆかりがある海外在住者(20カ国・地域から約280人)が鹿児島を訪れた。この大会に参加するためにブラジルからは27名が訪問団として来日していたが、そのうち18名が奄美にゆかりを持つ人々だった。なぜブラジルからの訪問団は奄美にゆかりをもつ人々の参加が多かったのだろうか。

ブラジル在住の奄美にゆかりを持つ訪問団の来日の目的はもちろん世界大会への参加だったが、実はもっと大きな理由があった。1世は数十年ぶりに親戚や同級生に会うこと、2世や3世は祖父母や両親の故郷である奄美に訪れて祖先の墓参りをすることなども重要な目的であったが、彼らの一番の目的は、奄美大島宇検村村長へ感謝の気持ちを伝えることだった。

同年7月、ブラジルで開催された「ブラジル鹿児島県人会創立105周年記念式典」へ参加するため、奄美で一番多くのブラジル移民を送り出した宇検村は、訪問団(団長・元田信有村長)を結成してブラジルを訪問した。このときブラジル在住の奄美出身者や奄美にゆかりを持つ人々は、村長率いる訪問団と親睦を深め、奄美の話しを直に聞いたことで、それまで漠然としか描いていなかった“故郷、奄美”をグッと身近に感じた。日本で開催されるという鹿児島県人世界大会が参加者を募集しているということは知っていたが、自分たちとは関係のない話しだと思っていた。しかし奄美から訪問団がブラジルまで来てくれたことで、もう一度故郷奄美に帰りたい、奄美を見たい!という気持ちになった。そこで初めて「(奄美へ)行こう!」となった。「村長さんに、お礼をしなきゃ」。

不景気が続いていたブラジルでは日本への渡航費の積み立てが大変だった。丸二日かかる飛行機での長旅も足腰に負担がかかるので少し勇気を必要とした。それに、日本や奄美の人々が自分たちを歓迎してくれるのだろうかという不安があった。来日メンバーの中には90年代にブラジルから日本へ「デカセギ」に来て、言葉の壁から辛い思いをした者もいた。でも、この機会を逃してはいけないと思った。

2世、3世の訪問団

2018年10月31日東京での歓迎レセプション。11月1、2日は鹿児島市に移動して公式式典とおはら祭に参加をした。来日前からブラジルで“おはら節”のビデオ映像を見て、みんなで一生懸命練習をした。「日本だから、きちんと踊らなきゃ駄目でしょう」。そう言って、本番直前まで振付を確認した。約1時間に渡って鹿児島市内を練り歩いた。大勢の観客の前で、ブラジルで作成してきたお揃いのTシャツを着て踊った。沿道の人々が「ブラジル頑張れ!」と応援してくれた。宇検村の村長も応援に駆けつけてくれた。

おはら祭でのパレード

奄美でも村を挙げて歓迎してくれた。デカセギで来日した頃は仕事ばかりで、奄美に来ることなんて考えたこともなかった。奄美で過ごした時間は「夢みたいだった」と宇検村2世の高田・ノルマン・いつおさん(69)は帰国する日、空港まで見送りに行った筆者に語ってくれた。

宇検村では2018年10月から12月末まで「宇検村ブラジル移民100周年企画展(宇検村教育委員会主催)」を開催していた。宇検村をはじめ奄美各地から新天地ブラジルを目指した人々の歴史と、これまで100年続いてきた宇検村とブラジルとの交流の歴史を知ることができる展示となっていた。

筆者は奄美の人々が移民や移住の歴史を知ることで、いま奄美へと移住してくる人々と彼らを受け入れる側の私たちの社会を考える機会になってほしいと思った。戦前資料も展示されている貴重な奄美の移民の記録。奄美だけで開催するのはもったいない。そこで、2019年3月30日から5月30日まで横浜みなとみらいのJICA横浜でも展示をする。ぜひたくさんの人に足を運んでもらい、ブラジルと奄美の100年のつながりを見てもらいたい。

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「ブラジルと奄美・宇検村 —海を渡った開拓者たちの百年—」

会期 2019年3月30日—5月30日
場所 JICA横浜 2階回廊
観覧無料

 

* 本稿は、南海日日新聞(2018年11月29日)からの転載です。

 

© 2019 Saori Kato

Amami Brazil identity Kagoshima roots

このシリーズについて

1918年、鹿児島と沖縄の間にある奄美群島から「奄美人」がブラジルへ集団移住をはじめた。それからちょうど100年が経った2018年、ブラジルと奄美では「ブラジル奄美移民100周年」を記念して様々な交流事業が催され、次の100年を目指して新たな交流が始まった。従来のブラジル移民史では語られることのなかったブラジル奄美移民について、筆者が2018年4月から5月にかけて『南海日日新聞』に連載した記事に加筆修正して紹介する。