シアトルを中心に店舗を構えるUwajimaya(宇和島屋)は、北西太平洋岸ではもっとも大きな、日本食をはじめとしたアジア系の食料品を扱うチェーン店である。現在シアトル市内のほか、シアトル郊外のベルビュー(Bellevue)、同じくレントン(Renton)、そして隣のオレゴン州ポートランド郊外のビーバートン(Beaverton)にも店舗を広げている。
同じように日系のスーパーでチェーン展開している企業はほかにもいくつかある。どれもカリフォルニアを拠点としていて、食料品から生活関連商品まで幅広く扱い、外食にも積極的に乗り出しているところもある。その概要を見てみよう。
日本の企業がはじめる
カリフォルニア州トーランス(Torrance)が本部のMitsuwa Marketplace(ミツワ・マーケットプレイス)は、トーランスをはじめ、サンノゼやサンディエゴなどカリフォルニア州に5店舗、ほかにニュージャージー店(ニュージャージー州アーリントン・ハイツ)、シカゴ店(イリノイ州エッジウォーター)、テキサス店(テキサス州プレイノー)、ハワイのワイキキ店(ハワイ州ホノルル)と合計11店舗をもつ。
ミツワの各店は、ほとんどがもともと日本の大手スーパー、ヤオハンがアメリカで展開した店舗である。海外に積極的に進出し、店舗展開したヤオハンは1984年にカリフォルニアでショッピングセンターを開いたのをはじめ東部ニュージャージーにも複合施設を開いた。しかし、1997年に経営破綻、これを受け継ぐ形で1998年3月にミツワが創業した。
日本の食料品をはじめ、生活用品や電気製品、化粧品なども販売、店舗によっては日本食のレストランも備えている。経営母体はミツワ・コーポレーションで、ワノバ・グループ(カリフォルニア州)に属していた。しかし2012年12月、日本の商社のカメイ(仙台市)が、ワノバ・グループの全株式を取得しミツワを子会社化したため、現在ミツワはカメイ・ノースアメリカのというカメイの海外法人の一つになっている。
カメイは、主力の石油製品の卸売業が縮小する中で多角化戦略の一環として、貿易事業を強化するためこの買収を行ったという。
経営母体が変わっていく
カリフォルニア州ガーディナに本社を置くMarukai Corporation(マルカイコーポレーション)は、マルカイ・マーケットとTOKYO CENTRALといった新たな店名で同州内に9店舗をもっている。
もともとは大阪市に本社をもち、食品、酒類、などを取り扱う輸入販売会社のマルカイコーポレーションが、1965年にハワイに進出し米国法人を設立し、81年にカリフォルニアに「マルカイ」の1号店を開いた。
その後店舗を増やしハワイに2店舗、カリフォルニアに9店舗を構えた。海外日系小売業では初の会員制を取り入れた。しかし、2013年9月に日本の総合ディスカウント・ストアのドン・キホーテに買収され、以来ドン・キホーテグループの一員となっている。米国のマルカイコーポレーションは、日本の同名の会社とはまったく別のもの。
もうひとつ、カリフォルニアでよく知られているのが、ニジヤマーケット(Nijiya Market)だ。1986年に南カリフォルニアのサンディエゴで1号店を開き、現在は、ロサンゼルスのリトル東京や、サンフランシスコ、サンノゼなどカリフォルニア州内に10店舗を展開。このほか、ニューヨークに1店舗、ハワイ・ホノルルに2店舗の合計13店舗を米国内に出している。
日本食材を中心とし、とくにオーガニック野菜を売り物にしているなど、日本食、日本食材のもつ健康志向を強調しているところが特色だ。
さらに、近年では2016年にカリフォルニア州内で日系のセイワ・マーケット(Seiwa Market)が2店舗を開き、その後テキサス州ヒューストンにも進出した。
こうしてみると、規模は大きくても戦前から同じ資本と、経営母体で事業を継続しているところはないのがわかる。この点、長い歴史をもち一貫したファミリー経営のシアトル宇和島屋はやはり異色の存在だ。
© 2017 Ryusuke Kawai