ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2023/10/6/ecogen/

第1回 クリーンエネルギー事業で注目集めるエコジェン社

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。

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渡邉憲明副社長

第一回目はエコジェン社(ルイス・カブラルCEO)の渡邉憲明副社長に話を伺った。今日のようにSDGsビジネスが取りざたされる前から時代を先取りし、クリーンエネルギー事業に着手してきた同社は、産業の基盤からブラジル社会に貢献する企業だ。

高効率と万全の管理体制=コージェネレーションシステム

エコジェン社は、工場や商業ビル、ホテルなどで使用する発電機などのエネルギー生産設備の設計、建設、操業を請け負っている。日本の技術を用いた天然ガス利用設備「コージェネレーションシステム」(熱電併給システム)では、発電時にでる廃熱を蒸気製造や空調熱電に再利用でき、高いエネルギー利用効率の実現に成功した。

顧客の需要に応じてコージェネレーションシステム設備の長期レンタル、操業、保守管理サービスも行っている。

本社オフィス地下に設置されたコージェネレーションシステム

現在、ブラジル全土約80カ所にサービスを提供し、24時間体制で本社のコントロールセンターから管理を行っている。万全な管理システムには、大手企業やショッピングセンターなど、日系、非日系を問わず、高い信頼が寄せられている。


SDGsビジネスの心強いサポーター

本社オフィスのあるビル

エコジェン社では2002年の会社設立当時、発電燃料には天然ガスや重油などの化石燃料を主に用いていた。しかし、それらの価格高騰により、2016年頃から安くて環境に良いバイオ燃料の利用研究を本格的に取り入れ始めた。

近年、世界では急速にビジネスのSDGs化が進み、企業には「脱炭素」の取り組みが求められるようになった。エコジェン社のバイオマス、バイオガス、太陽光を用いたクリーンエネルギー設備の需要は高まりを見せ、同社の設備を導入した顧客企業からは好評を得ている。


生産性維持とCO2削減=AI分析で実現

今年2月からは、顧客の施設のエネルギー消費やCO2排出データをAIで分析し、どうすれば生産性を維持しながらエネルギー消費やCO2を削減できるかを診断する「Ecogen360°」というコンサルタント事業も開始した。

ブラジルでは企業の脱炭素化が加速している。CO2の排出削減効果のデータを活用したカーボンクレジット発行プロセス支援など、今後は既存事業含め顧客の「脱炭素への取組を一気通貫で支援する」サービスに進化させたいという。

エコジェン社が目指すのは、人類が直面する気候変動問題において、温室効果ガス削減の主導的立場にあるブラジル産業の需要に応えながら、ブラジル経済、社会の安定的で持続可能な発展に貢献していくことだ。

社風はブラジルオープンマインド

エコジェン社は2002年にガス会社Comgasの姉妹会社として立ち上げられ、10年前に三井物産が出資して現在は100%子会社となっている。しかし、本社オフィスには一見して三井の看板は見あたらない。


エコジェン社は独自ブランドとして市場や顧客から認知されている。

エコジェン社の社風は、肩書きを超えたオープンなコミュニケーションや、結果を緻密に分析しながらも「先ずやってみよう」という挑戦に対する積極性、寛容さ、自立性の高い意思決定などに見られるようにブラジル風だ。

好きな場所で働けるオフィス

コロナ禍の間にリフォームされたオフィスの内装はエコロジカルな雰囲気で、各所には日本を意識したデザインが用いられている。ホームオフィスが実施されるようになり、社内では社員の席を固定しなくなった。好きな場所で自由にリラックスして働くことのできる環境が整っている。瞑想ルームもあり、社員の心身の持続可能性にも配慮されたユニークな空間だ。


「環境対策がライフワーク」=渡邉副社長、日系社会と繋がりも

2021年12月に駐在を開始した渡邉副社長は、本社で4年以上ブラジルの発電分野を統括した経験がある。再生可能な環境資源やバイオ燃料が豊富なブラジルには大きなポテンシャルを感じているといい、「気候変動に立ち向かうことを個人的なライフワークと考えています。環境政策を重視し、世界から注目されるブラジルは、私個人にとっても最高の舞台だと思っています」と語る。

ブラジル赴任は予想外だった。しかし、妻の祖父が日系2世で、戦前にブラジルで生まれ育った人物であることがわかり、日本移民資料館の移民名簿検索機に義祖父の名前を掛けてみると、義祖父家族の名前が出てきた。検索画面を見ながら自身とブラジルの繋がりを実感し、温かい気持ちになったという。

日本祭りや盆踊り大会などにも参加した。多くの日系人がブラジル社会に溶け込みつつも、食や祭礼などの日本の伝統文化を維持していることに感動を覚えたという。 

正式名称:Ecogen Brasil Soluções Energéticas S.A.
所在地: ブラジル・サンパウロ州
設立年月:2002年10月
従業員数:300人
事業内容:ブラジル国内における産業・商業向け
     エネルギーサービス事業

 

*本稿は、『ブラジル日報』(2023年4月1日)からの転載です。

 

© 2023 Tomoko Oura

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このシリーズについて

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。ブラジル日本商工会議所協賛企画。『ブラジル日報』からの転載。

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執筆者について

1979年兵庫県生まれ、高校卒業まで神戸市で育つ。大学卒業後、2001年からブラジル・サンパウロ在住。フリーランスで現地の日本人向けマスコミを中心に取材・執筆活動ほか、編集業務に携わっている。

(2023年9月 更新)

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