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ブルース・ハレルさん —「人種は関係ない。原動力は愛」- その2

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政治家の道へ

2007年、ブルースさんは弁護士から政治家へ転身する。「世の中に恩返しをしたい」と思ったことがきっかけだ。長年、弁護士として活躍したブルースさんは、仕事を通じて企業、非営利団体などあらゆる分野で働く人たちと交流を深めた。その経験を市政に生かせると考えたのだ。

シアトル市議会議長を務めるブルースさん、2019年撮影

12年に及ぶ議員生活の中で、ブルースさんが特に誇りに思う政策がいくつかある。2013年、犯罪歴のチェック欄を廃止するバン・ザ・ボックス(Ban the Box)法が可決された。これは、職場の安全を損なうことなく、軽犯罪などの逮捕歴がある人が職を探しやすくすることを目指した雇用支援法で、ブルースさんが起草した。逮捕歴のある人は、シアトル市だけでも12万人以上、キング郡では42万人を超す。この法律が施行される前は、たとえ少量の薬物の所持や使用といった軽微な犯罪でも、前科があるというだけで仕事に就くことは非常に難しかった。そのような人に再起の道を開いたことになる。

2010年には、教育分野でのテクノロジー格差解消に向け、シアトル学区の低所得者世帯の生徒約2万人に月10ドル以下での高速インターネット・アクセスを提供。その功績が認められ、ブルースさんは全米電気通信諮問委員会(NATOA)からブロードバンド・ビジョナリー・オブ・ザ・イヤー賞を授与された。さらにブルースさんはシアトル市とサウス・シアトル・カレッジの提携を実現させ、公立高校を卒業した学生が無料で同カレッジに通える制度を整えた。「13年生の約束(13th Year Promise)」と呼ばれるこの取り組みは、ジェニー・ダーカン現市長にも引き継がれ、充当額は500万ドルまで増加。対象となるカレッジも市全域に拡大された。

もうひとつ、ブルースさんが関わった大事な法律がある。2015年に施行された最低賃金を時給15ドルに定めた法律だ。当時、ブルースさんはシアトル市が設置した所得格差是正諮問委員会の主要メンバーだった。この法案を可決するために、雇用者の代表グループ、自営業者や企業経営者、非営利団体、人権団体、飲食・サービス業界、製造業界で働く人々など大勢の協力を仰いだ。

警官による拘束中にジョージ・フロイドさんが死亡した事件での人種差別に抗議するBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動に参加。2020年撮影

ブルースさんの関心は安全な街づくりにも及ぶ。「私は治安維持に本気で取り組みました。公安委員長を務め、警察官を増員するために毎年予算を増額し、2016年末にはシアトル史上最多となる1,384人の警察官が任命されました」。この増員が警察官による不祥事や不当な暴力の増加につながらないように、2017年には「バイアスフリー」取締法を単独で提出し、2019年に可決された。この法律により、人種差別や偏見による取り締まりを受けた個人が裁判所に申し立てられるようになった。また、警察官が職務質問したり、一時的に身柄を拘束したりする割合が人種間で不当に偏っていないかを検証するために、シアトル市は詳細なデータ収集を義務付けられた。警察官は「バイアスフリー」に関する研修を受けることが必須となった。


市長選に再挑戦

ブルースさんは過去にも市長選に立候補している。今回、再び挑戦する理由は何だろうか。「私はシアトルで夢をかなえ、家庭を持ちました。恩義を感じているシアトルが現在、苦境にあえいでいる。その現状を打開したいのです。自分の経験や人脈など、私という人間を作り上げている全てを市政に注いで、街を活性化、再生させるために奉仕するつもりです」

ブルースさんは以下の重点政策を掲げる。人種の平等と社会正義、小規模ビジネス支援を中心とした経済活性化、公共の安全、ホームレス問題への対応だ。「日系とアフリカ系のルーツを持ち、長年シアトルで暮らし、実績を築いてきました。今、シアトルが抱える多くの問題を解決に導く資質が私には備わっていると信じています」

ブルースさんは次世代を担う若い人たちへもメッセージを送る。「キャリアを築くうえで助けとなるものは、人脈と知識です。幸い、これらは自分でコントロールできます。志に共感できるのであれば、多くの人を助けましょう。それは必ず報われます。そして世の中の傾向を知るために新聞や本を読み、ボランティアでも良いので率先して問題解決に取り組んでください。最後に、最も重要なのは、常に前向きな姿勢でいることです。人は最終的に、態度で評価されます。全ては自分の選択にかかっています」

ブルース・ハレルさん一家。妻、子どもたちと孫に囲まれて。2015年撮影

 

*本稿は、『北米報知』7月9日号に掲載された英語記事を一部抜粋、意訳したもので、2021年8月13日に「Soy Source」へ掲載されたものを許可をもって転載しています。写真は、ブルース・ハレルさん提供。

 

© 2021 Elaine Ikoma Ko / The North American Post

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