日系アメリカ文学雑誌研究: 日本語雑誌を中心に

日系日本語雑誌の多くは、戦中・戦後の混乱期に失われ、後継者が日本語を理解できずに廃棄されてしまいました。このコラムでは、名前のみで実物が見つからなかったため幻の雑誌といわれた『收穫』をはじめ、日本語雑誌であるがゆえに、アメリカ側の記録から欠落してしまった収容所の雑誌、戦後移住者も加わった文芸 誌など、日系アメリカ文学雑誌集成に収められた雑誌の解題を紹介します。

これらすべての貴重な文芸雑誌は図書館などにまとめて収蔵されているものではなく、個人所有のものをたずね歩いて拝借したもので、多くの日系文芸人のご協力のもとに完成しました。

*篠田左多江・山本岩夫 『日系アメリカ文学雑誌研究ー日本語雑誌を中心にー』 (不二出版、1998年)からの転載。

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詩歌とエッセイの文芸誌『ハートマウンテン文藝』 -その2/5

その1>>

また、ハートマウンテン収容所は10ヶ所の収容所の中で徴兵抵抗運動が組織された唯一の収容所である。その運動を推進したのが「ハートマウンテン・フェアプレイ委員会」(Heart Mountain Fair Play Committee)であった。

ハワイ出身の二世キヨシ・オカモトが1943年11月に一人でつくった「一人だけのフェアプレイ委員会」(Fair Play Committee of One)が支持を得て発展していった組織で、1944年1月から運動を積極的に展開した。彼らは、正当な手続きを経ない日系アメリカ人の収容は違憲であるとして、アメリカ市民としての権利が回復されない限り ...

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詩歌とエッセイの文芸誌『ハートマウンテン文藝』 -その1/5

はじめに

アメリカにおける日本語文学は多くの人々にとって今なお未知の分野であるとはいえ、その太平洋戦争以前の状況については『在米日本人史』(1940)あるいは『アメリカ移民百年史』(1962)などの歴史書を通して、ある程度の知識を得ることができる。

しかし太平洋戦争中の日本語文学となると、これに言及する書物は極めて少ない。戦時中の強制収容所に関しては日米両国で多くの研究がなされ、回顧録も出版されているが、その中に住む人々の文学活動、とりわけ日本語による文学活動について触れるものはほとんど見られないのである。篠田左多江氏の一連の研究論文と山城正雄『帰米二世』(1996)、「鉄柵」(『羅府新報』1991年1月29日)、野沢譲二「『鉄柵』の思い出 ...

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『鉄柵』 発展途上の帰米二世の文学 -その6/6

>>その5

4.『鉄柵』の特色と果たした役割

『鉄柵』の特色は、第一に一世の指導の下に創られた帰米二世の文学同人誌であること。加川文一、泊良彦など戦前から詩人や歌人として評価を得ている一世が指導的立場にいて、主力は帰米二世の若者たちであった。彼らはきわめて身軽な独身者で、ある意味では収容所を読書と思索、創作の場とすることができた。この時期は日系社会の主導権が一世から二世へと移行した時代であるが、この世代交代は文学の世界でも同様で、一世の指導のもとに帰米二世という新しい世代の台頭を促したのが『鉄柵』であった。

第二に水準を設けて掲載作品の選考を行ったこと。「お高くとまっている」などと悪口を言われながらも、水準に満たない作品の掲載を断ることで、文学作品の質を高めようとした。同人は各号が出るごとに合評会を開いてお互いの作品を批評しあった。したがって同人はつねに作品を向上させようと努力した ...

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『鉄柵』 発展途上の帰米二世の文学 -その5/6

>>その4

井阿之雨という変ったペンネームで書いているのは、戦後長い間ロサンジェルスの日系新聞『羅府新報』の編集長を勤めた帰米二世の矢野喜代士である。矢野の戦前のペンネームは創刊号で使っている丸山定夫であったが、収容所ではアメリカ人がYANOを発音するときの「イアノウ」を漢字にあてはめて井阿之雨としたのだという。

「終身教室」(第3・4号)、「ジャーナリズムに現はれた精神分析」(第6号)、「常識と文化」(第8号)、「直観について」(第8号)、および丸山の名で短編小説「智識人の責任」(創刊号)がある。このなかで「智識人の責任」は無責任なうわさがうわさを呼び ...

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『鉄柵』 発展途上の帰米二世の文学 -その4/6

>>その3

編集者のひとり河合一夫は、樋江井良二のペンネームで書いている。彼はたいへんな文学青年で、岩波文庫をほとんど全巻揃えて収容所へ持ってきたほどの読書家だったという。

詩は「君が像を彫れり」(創刊号)、「鮭」(第2号)の2篇、長編小説「時代」を創刊号から第6号を除く第7号まで6回連載している。長編小説となっているが、一貫したストーリーはない。第5号までは、ひとりの青年と隣に住む人妻が姉と弟のような交際をするが、近所の人びとのうわさの種にされ、自分の純粋な気持ちが理解されずに苛立つ心の動きを描いている。しかし第7号から突然日記形式になって別の話に変わる。収容所と言う閉ざされた小さな世界で、若者たちが他人の目を気にしつつ、出会い、愛憎 ...

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