デカセギ・ストーリー

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。

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第十四話 ジョージに何があったのか

僕は20数年ぶりに故郷に戻った。ちょうど出張で近くの町に滞在することになったので、多忙だったが、寄ることにした。

町は、以前、聞いていたよりすっかり変わっていて、びっくりしたし、又、残念な気もした。昔、にぎわっていたメイン・ストリートは、商店がわずかに残っているだけで、さびれていた。子どもの頃、よく菓子パンを買っていたパン屋がバール1になっていたので、そこに入ってコーヒーを飲んだ。

父はその通りに店を持っていたが、長男、つまり僕の兄をサンパウロの大学に行かせるために、みんなでサンパウロに引っ越した。

僕が中学校を卒業したすぐあとのことだった。幼なじみと別れるのが一番辛かったが、ちょうどその頃にデカセギ・ブームが始まり...

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第十三話 塩辛&ポン・デ・ケイジョ

日系三世のリンダが日本に来たのは2007年の冬だった。今でも思い出に残っているのは親戚の温かい歓迎だった。

一人っ子のリンダは幼い頃にお父さんを亡くし、そのあと、最愛のお母さんも亡くしてしまい、独りぼっちになってしまった。18歳の時だった。それを知った、日本に住んでいるデカセギの叔父さんがリンダを呼び寄せてくれた。

叔父さんは家族と一緒に日本にデカセギに来て13年目だった。最近、ブラジル製品の商店「Mercadinho do Paulo」を開いて、そこで叔母さんと二人の息子も一緒に働いていた。もう一人の子どもは娘で、まだ学生だった。リンダもそこで働くようになり、毎日が忙しかったが、楽しかった。

春が来て、リンダは初め...

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第十二話(後編) 居場所のない子どもたち

あとわずかでブラジルに戻るサヤカは帰国の準備を始めた。家族へのお土産はまだ揃っていなかったが、それよりも気になることがあった。

それは、真夏の日に公園で出会った小さな女の子と、初めて耳にした「日本のブラジル人学校」のことだった。ブラジルの小学校で教えていたこともあって、サヤカはその学校を訪ねてみた。

金曜日の午後、ちょうど、子どもたちが帰る時間だった。外には送迎バスが待っていた。

ブラジルでは送迎バス費用は保護者負担なので、多くの子どもは歩いて帰るしかなかった。サヤカは日本のことも知りたかったので、校長に訊いて見た。「ここでも、送迎バス代は保護者負担で、月謝と教材と送迎バス代は別々に払ってもらっています。デカセギには...

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第十二話(前編) 居場所のない子どもたち

サヤカは学校の教師を25年間勤めた後、退職した。これで、やっとのんびりできる時間が持てると思った。

しかし、夫はまだ現役を続け、あと10年は働きたいと言う。だから、自分だけのんびりする訳にはいかないと思い直し、何かすることを探し始めた。

ちょうどその時、兄の子ども2人が日本に再びデカセギとして行くことを知った。2人とも日本で2年間働き、ブラジルに戻って来たものの、仕事が見つからず、「これでは、日本で暮らす方がよっぽどいい」と、再びデカセギを決心した。

サヤカは不思議だと思った。姪たちはまだ若いし、ブラジルの大学を卒業しているのに、仕事がなく、自分の国で働けないということに納得できなかった。いろいろ考えるうちに、...

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第十一話(後編) クレイトは、もうサンバは踊らない

クレイトは、15年ぶりに出会えた父親とゆっくり話をしていたかった。しかし、妹のケイラに「パパイは血圧が高いので、あまり興奮させたら体によくないから、今夜はここまで」と言われたので、久しぶりに「Boa noite、papai!(おやすみなさい、おとうさん!)」と言って、話を止め、外に出た。

その日は、夜空が特別きれいに見えた。正直にいうと、それまでは、空の様子に気付く余裕などなかった。日本にデカセギとして来たが、工場の仕事は以上にきつく、休まずに動いている機械と同僚の汗まみれの顔しか見えなかった。そんな惨めさから逃れようと、町から町へともっと楽な生き方を求めて歩きまわったが、たどり着いたのはパチンコ屋とか横丁のクラブだ...

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Brazil dekasegi fiction