第九話 サクラの花の咲くころ
真司とリンダは子どものころの友だちだ。と言っても、同じ学校に通ったこともなく、同じ公園で遊んだこともなかった。
真司は6歳のとき、お父さんの仕事の関係でブラジルに住むようになった。
お母さんは元ピアニストだったので、すぐにピアノ教室を開いた。生徒は日本企業の駐在員の子どもたちだった。
真司はアメリカンスクールに通っていた。その上、習い事もたくさんしていた。英語、バイオリン、チェスの教室などだ。
ある日曜日、お母さんはピアノのコンサートへ、お父さんはゴルフ場へ行くので、真司はどっちについていくか選ぶように言われた。「パパといっしょに行きたい」と、真司は、はっきり言ったので、ふたりともびっくりした。
ゴルフ場の帰り、車は広々…