限りなく遠かった出会い

1934年19歳で単身ブラジルに移住し、81歳にブラジルで他界した父が書き残した日記や、祖父一家の体験話などをもとに、彼らのたどった旅路を、サンパウロ新聞のコラム「読者ルーム」に連載した(2003年4月~2005年8月)。そしてそのコラムをまとめ、「限りなく遠かった出会い」として、2005年に出版した。このシリーズでは、そのいくつかのエピソードを紹介する。

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ある日系二世ブラジル人の正月の想い

私は元旦生まれである。父母の生涯でもっとも異常な時期であった戦時中、サントス市日本人退去命令のため、田舎町パラガスー・パウリスタの小さな日本人旅館「丸林」の一室に住んでいたときに生まれたと、父の古い日記に書かれてある。すなわち、これが私のこの世の始めての正月であったのだ。

父はこの事を下記のように書き記している。

「一九四四年一月一日午前十時四十分、妻、敏子、男児出産する。この子、なんと天運の良き児であろう、なんと有意義な日に出生したのだろうか。私は三十歳の年をむかえることになった。この児及び一家に幸あれ。

年頭から本年はヨーロッパ戦線で非常になる激戦になる模様である。ドイツ軍はほとんど東ヨーロッパを撤兵中だ。三十一日から元旦、二日に掛けて、ベルリンが一千機の飛行機によって空爆されて死傷十四万人と当地新聞は報じている ...

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