二つの国の視点から

海外に住む日系人は約300万人、そのうち在米日系人は約100万人といわれる。19世紀後半からはじまった在米日系人はその歴史のなかで、あるときは二国間の関係に翻弄されながらも二つの文化を通して、日系という独自の視点をもつようになった。そうした日本とアメリカの狭間で生きてきた彼らから私たちはなにを学ぶことができるだろうか。彼らが持つ二つの国の視点によって見えてくる、新たな世界観を探る。

*この連載は、時事的な問題や日々の話題と新書を関連づけた記事や、毎月のベストセラー、新刊の批評コラムなど新書に関する情報を掲載する連想出版Webマガジン「風」 からの転載です。

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カレン・テイ・ヤマシタ~自分の居場所を問い続ける日系3世作家 -その3

>>その2

激動の10年に重ねた青春期

I Hotelとは、かつてサンフランシスコのマニラタウンにあったInternational Hotel(国際ホテル)のことで、主にフィリピン系の低所得者層が暮らすアパートだった。

1920年代によりよい生活を求めてアメリカにやってきたフィリピン人にとって、低料金で利用できるI Hotelは不可欠な存在だった。1950年代には、このホテルを中心として約1万人のフィリピン人が暮していた。

1968年の12月、ホテルのオーナーであるミルトン・マイヤー社は、ビルを駐車場にするので立ち退くよう、住人に通達した。この頃には、マニラタウンは、I Hotelがある一角だけになっていた。高齢者のために安い宿泊施設を提供してきたこのホテルを守ろうと、労働団体 ...

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カレン・テイ・ヤマシタ~自分の居場所を問い続ける日系3世作家 -その2

>> その1

日本、ブラジル、アメリカの3つの視点

『ぶらじる丸』にこんな記述がある。

〈イチロー・テラダは、最近自分の孫が、大学農学部の入試に合格したことを誇らしげに語った。かれは、この達成をまるで自分のことのように喜び、こう話している。「日本人は、もともと大地とともに生きる人々です。原生林の処女地に移り住めば、人間はその大地に対して責任を担うことになります。農業によって大地のために力を尽くさなければなりません」。またその一方で、テラダは自分の孫娘についての複雑な想いも語る。彼女は成績優秀者として建築学科を卒業した。しかしブラジルでは安定した職が見つからず、彼女もまた、近年下層労働者として日本へと渡る、十五万人を超える日系ブラジル人のひとりとなった ...

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カレン・テイ・ヤマシタ~自分の居場所を問い続ける日系3世作家 -その1

今回は、日系アメリカ人の表現者の中で、とりわけ特異な才能を持つ、カレン・テイ・ヤマシタを取り上げたい。

カレン・テイ・ヤマシタは、1951年にカリフォルニア州のオークランドで日系3世として生まれた。ミネソタにあるカールトン・カレッジで英文学と日本文学を専攻したが、1971年、日本の文化と文学を学ぶため、交換留学生として1年半早稲田大学に留学した。1975年、奨学金を得た彼女はブラジルの日系移民を研究するためにサンパウロに渡り、10年間滞在する。ブラジル滞在中にブラジル人と結婚して家庭を持ち、短編や戯曲を書き始める。1984年にアメリカに戻った後も創作を続け、ロサンゼルスのアジア系劇団、イースト・ウエスト・プレーヤーズ ...

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ケニー・エンドウ ~"ダブル"の感覚で叩く和太鼓 -その2

>>その1

撥に託す平和への思い

帰国後、彼は「ケニー・エンドウ太鼓アンサンブル」を結成し、ハワイを本拠地として全米で活動を続けている。海外での公演も多く、日本をはじめ、イギリス、ドイツ、ベルギー、チェコなどのヨーロッパ諸国、ブラジル、アルゼンチンなどの南米諸国、またインドや香港でも公演を行っている。

彼の音楽自体にも、アフリカ、インド、ブラジルなど、さまざまな国の音楽の要素が取り入れられている。大学時代にも民族音楽を勉強しているから、もともと関心が強かったのだろう。

1994年にリリースされたデビューアルバム ...

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ケニー・エンドウ ~"ダブル"の感覚で叩く和太鼓 -その1

東京の浅草に太鼓館(ドラム・ミュージアム)という博物館がある。展示物に触ってもいけないのがほとんどの博物館であるなか、ここでは好きなように世界各地の太鼓を叩いていい。和太鼓の名店、宮本卯之助商店が1987年につくった世界でも珍しい博物館だ。

太鼓館の元室長、越智恵は、以前、ロサンゼルスで開かれたTaiko Conference(太鼓会議)に参加した。「太鼓会議」は1997年にはじまり、会を追うごとに盛大になり、内容も充実してきている。さまざまな流派がいわば超党派で集まる会議で、派閥意識が薄いアメリカだからこそできる催しだと越智は話していた。

宮本卯之助商店と強い関係を持っている日系アメリカ人の和太鼓奏者が、ケニー・エンドウである。同商店はこれまでケニーが出したCDの制作に携わっており ...

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