ディスカバー・ニッケイ

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一世の記録を拾い集めた男 ~加藤新一の足跡をたどって~


2020年11月13日 - 2022年1月28日

1960年前後全米を自動車で駆けめぐり、日本人移民一世の足跡を訪ね「米國日系人百年史~発展人士録」にまとめた加藤新一。広島出身でカリフォルニアへ渡り、太平洋戦争前後は日米で記者となった。自身は原爆の難を逃れながらも弟と妹を失い、晩年は平和運動に邁進。日米をまたにかけたその精力的な人生行路を追ってみる。

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このシリーズのストーリー

第11回 アメリカ移民と父・松次郎の渡米

2021年4月9日 • 川井 龍介

一旗揚げようと日本を出た? 『米國日系人百年史』のなかで加藤新一が記した自らのプロフィールによれば、父・松次郎は、新一が生まれた年(1900年)に、生まれたばかりの長男新一と妻を広島に残してアメリカに渡った。想像の域を出ないが、おそらく出稼ぎのつもりだったのだろう。 「加藤家のあったあたりは昔は農地で、加藤の家も土地を持っていましたし、松次郎さんがアメリカへ行ったのも、一旗揚げようとしたからでしょう。そういう人はいっぱいいて、成功して帰ってきた人のところへおじさん(新一…

第10回 加藤家の墓

2021年3月26日 • 川井 龍介

原田東岷が死を確認 80歳を過ぎても軍縮問題など平和活動に打ち込んでいた加藤新一は、1982年2月9日の朝、自宅で脳梗塞のため亡くなった。突然のことだった。妻の章子さんはアメリカ生まれでモダンな生活を好み、アメリカ生活の長かった夫婦はオープンで仲睦まじく、寝室もともにしていた。 この日の朝、甥の吉田さん宅に章子さんから、ベッドにいる夫、新一の様子がおかしいと電話があった。吉田さんが母親の春江さん(新一の妹)と一緒に加藤宅に駆けつけると、新一はベッドの上で口をあけたまま横…

第9回 確かに全米を回っていた

2021年3月12日 • 川井 龍介

フロリダで車を売ろうとしたが  加藤新一の親族を探していた私は、2020年3月広島市東区戸坂千足というところで、運よく彼の甥にあたる吉田順治さんに巡り合うことができた。建設業を営んでいた吉田さんは、加藤の妹、春江さんの長男にあたり、加藤のことを「おじさん」と呼び、親しい関係にあったことがわかった。 偶然の訪問にもかかわらず、時間があるということで話を聞かせてもらえることになった吉田さんに、私はフロリダの日本人移民秘話をノンフィクションにまとめたことや、日系アメリカ人文学…

第8回 広島の親族は?

2021年2月26日 • 川井 龍介

かつての住所を訪ねると  「米國日系人百年史」のなかの自己紹介ともいえるプロフィール記事と、1982年2月10日の中国新聞社の訃報(死亡記事)などから、加藤新一の人生が要約できたところで、広島出身で最後は故郷で一生を終えた彼の血縁者や、彼を知る人を改めて探すことにした。 加藤の、アメリカ生まれのひとり息子は 、日本で高校を卒業した後アメリカに戻ったので、直系の親族は日本には見当たりそうになかった。そこでまずは加藤が暮らしていたと思われる、訃報にある住所を訪ねることにした…

第7回 81歳で故郷広島に永眠

2021年2月12日 • 川井 龍介

中国新聞の連載記事「原爆と中国新聞」(2012年3月〜5月)によれば、広島に原爆が落とされた当時、加藤新一は中国新聞記者の報道部長で、被爆当日市内を歩き回り、一ヵ月後には広島入りしたアメリカの調査団に同行した赤十字駐日首席代表のマルセル・ジュノー博士の通訳兼案内係として廃墟の被爆地を回ったことが分かった。 彼はそこで何を見て、どう思ったのか。またそれが、後の彼の人生に何か影響を及ぼしたのだろうか。さらに詳しく知りたいと思った私は、連載記事に署名のあった編集委員の西本雅実氏…

第6回 原爆投下時に記者として

2021年1月22日 • 川井 龍介

ある人物について、詳しく知ろうとするならまず親族にあたるのが常道だろう。加藤新一については、彼が執筆・編集した「米國日系人百年史」のなかの自身のプロフィールのなかに、妻と子についての記載がある。妻はすでに他界されているだろうから、「一子」として紹介されている「ケネス直」についてあたってみることにした。 生まれは、日本かアメリカかわからないが、ケネスというのが英語名で直が日本語名だと思われるケネスは、広島の名門私立である修道学園高校を卒業している。この学校は、1725(享保…

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このシリーズの執筆者

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)