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目玉先生、ニッポンを語る

今年の春、日本の高等学校で英語を教えていた若き日系人教師、ノーマン・ミキ・デザキ先生が、英語によるディスカッション授業のテーマのひとつとして、日本社会における差別問題を取り上げました。このときの授業内容をまとめた動画をインターネットに投稿したところ、「ネット右翼」とよばれるネット上で侮辱的な表現を用いて右翼的・保守的な発言・活動をする日本人から激しいバッシングにあったという出来事がありました。

デザキ先生は両親が新一世の日系二世で、フロリダ州で生まれ育ちました。アメリカで大学を卒業したのち、JETプログラムをとおして来日し、日本各地の学校で英語を教えるようになりました。英語のディスカッション授業のテーマとして、日本における差別問題を取り上げたのは、これからの日本社会を支えていく生徒たちが、さまざまな差別問題が日本にも存在しているのだということを認識することが、重要だと考えたからです。

ディスカッションをはじめるにあたり、デザキ先生は『Eye of the Storm』を上映しました。これは、小学校3年生に人種差別を体験させることで、人種差別とは何かを教えようとしたドキュメンタリー作品です。アメリカの教育現場では、差別感情がどのように形成されるのか、そして差別が社会にどのような影響をもたらすのかについて理解させるためのおなじみ教材となっています。

デザキ先生は、このビデオを見せた後、生徒に質問をしました。

「日本社会に人種差別の問題が存在すると思う人は手を挙げてください。」

教室にいた約40名の生徒のなかで挙手をしたのは、ほんの数名でした。

生徒へ人種差別の問題が日本に存在するかどうかを問うデザキ先生(Youtube.comからのスクリーンショット)

次に、差別はアメリカ社会特有の問題であるかどうか生徒に尋ねたところ、生徒のおよそ9割が、「アメリカ社会特有の問題である」との認識を示しました。

そこで、デザキ先生は在日韓国・朝鮮人の問題、同和地区の問題、沖縄に対する差別問題などについて言及し、日本社会における差別の状況について説明しました。

授業を受けた生徒達の反応は好意的で、日本社会における様々な差別問題について知らされたことは「啓発的(Enlightened)」なものだったといえるでしょう。学校側も、このクラスをもっと他の生徒にも受けてもらいたいと、支持をしていました。

そしてこの授業を終えた数日後、デザキ先生は、生徒とのやりとりをインターネットに投稿しました。

ところが、この動画が「ネット右翼」の目に留まったのです。彼らは、デザキ先生の教育者としての使命とも受けとめられるアクションを、日本人嫌いが、日本のイメージを悪くするために、日本社会における「恥」を取りあげていると主張し、デザキ先生への個人攻撃をはじめました。彼らによるバッシングはすさまじいもので、その影響は彼の勤務していた学校のみならず、地元の教育委員会にもおよびました。「ネット右翼」から脅迫を受けたデザキ先生は悩んだ末、動画をそのままにすることに決め、動画の最初に英語と日本語で、動画を削除することを拒否するメッセージを載せました。

動画をみる>>

まもなくして、この話はアメリカでも話題になり、ワシントン・ポスト紙がデザキ先生の勇気ある行動をとりあげました(「American teacher in Japan under fire for lessons on Japan’s history of discrimination」2013年2月22日、掲載記事)。記事をとおして、「ネット右翼」とよばれる日本人が、日本社会の右傾化を助長し、排外感情を高めていることなどが指摘され、地方のみならず、国の政治までをも巻き込んだ社会問題へと発展していることを明らかにしました。

その一方、渦中のデザキ先生は新たな動画を投稿し、「ネット右翼」から個人攻撃や脅迫があったことを告白しました。そして動画のなかで、日本社会においては差別の問題を語らずに忘れることで「雲散霧消」しようとする傾向があることについて触れ、隠蔽や沈黙では差別問題は克服されないことを強調しました。

また、イジメの問題や日本人による「アジア蔑視」についても触れ、他者にたいする「上から目線のまなざし」や、他者にたいして一方的な偏見をもつことが差別につながることを強調したうえで、常に冷静な態度をとり、冷静なまなざしをもって他者を見ることを訴えました。

動画を見る>>

「ネット右翼」による横暴・狼藉の一方で、デザキ先生の主張に理解を示す人々ももちろんいます。寄せられたコメントの中には、動画の受け手、そして動画を観る人々のリアクションをもっと慎重に考慮すべきだったという意見もありました。言葉の壁や歴史認識の壁などはあっても、彼の考えに賛同し、「差別は存在しない」という人々の主張をを否定する投稿もありました。

この動画が発端となった一連の出来事からうかがえることは、日本社会にはいまだに差別や偏見問題について語ることの「難しさ」が存在するということです。そして、そのような社会問題にたいして冷静さを欠き、過剰反応を示す「ネット右翼」とよばれる排外主義者たちが、日本社会のなかで幅を利かせているという不都合な事実が存在します。このようなグループが、ほんの一握りの人間であることを、わたしは願いたいものです。

ワシントン・ポストの記事で、デザキ先生は日本に特別な愛着があり、日本の差別の問題について授業で取り扱ったのは、日本をよくするために必要なことだからだと述べています。これは彼なりの日本人または日本社会への愛情であるとわたしは認識しています。デザキ先生は、「ネット右翼」が誤解しているような、日本が嫌いだという理由で日本社会を非難したわけではありません。

この点については、わたしも以前、ディスカバー・ニッケイに台湾系日本人という立場で日本社会における差別の問題について批判をしたことがありますが、それはデザキ先生と同様に日本にたいする「特別な気持ち」からであることを述べておきます。

© 2013 Takamichi Go

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