第９回目はNTTリミテッド社の水守信介JMNC―LATAM副社長に話を聞いた。
ロンドンに本社を置く同社は、2019年にNTTコミュニケーションズ、ディメンションデータ、NTTセキュリティなどを含む31社を統合して設立された。NTTは、1974年にブラジリアに海外事務所を開設してから今日、約半世紀にわたりブラジルで活動を続けている。
NTTコミュニケーションズが手掛けてきたサービスや他社の強みを生かしながら、ブラジルでもグローバルなITソリューションサービスを提供している。同社はラテンアメリカ全体をカバーしているが、今回はブラジルの同社を取材した。
社員の国籍は98％が日本以外
NTTリミテッド社は2019年、それまで兄弟・姉妹会社としてビジネスを展開していた複数の会社が、ブランドを統一してグローバル展開するために、31社を統合して一つのNTTとして設立された。米州は北米とメキシコ以南（LATAM）に区分され、ブラジルはLATAMの中に含まれている。ブラジルのNTTは世界の他の地域と同様に重要であり、過去８年間に渡って見せた年間成長率は平均30％であった。
70か国以上のオフィスで約４万人、ブラジルでは１千人以上の社員がおり、全体の98％が日本以外の国籍者である。会社を統合する際には業務だけではなく、各社の企業文化なども融合されてきたが、移民が社会を発展させてきたブラジル同様に、それぞれのルーツに由来する強みをかけ合わせて同社は成長している。
ブラジルに適応させたサービスの提供
世界トップ３のデータセンターを携える同社のITソリューションは、インフラからアプリケーションまでフルスタックでサービスを提供でき、ネットワークはもちろん、セキュリティ、クラウド、マネージドサービス等様々なサービスをグローバルレベルで展開している。
ブラジルでも顧客のニーズに対するコンサルティングに始まり、満足度の高い環境を維持できるように継続的なマネージドサービスを提供し、それを拡大できる体制にあることが今後の成長のベースにもなっている。統合による企業規模の拡大は、ブラジルでの事業成長を加速させている。
日本では知らない人のいないNTTブランドだが、ブラジルでも約500社の顧客を持ち、その中にはあらゆる事業分野の主要企業も含まれている。日系と非日系を区別してビジネスされることはないが、「日系人社員がいることも含めて、日系社会が根付いていることは非常に助けられている」と、ラテンアメリカの日系企業統括の責任者でもある水守氏は話す。
日本で培われてきた技術や成功例のサービスを多くの国ではそのまま移転できるが、ブラジルの場合、ブラジル特有のニーズに対応する必要があることに加え、税制の違いもあり、他の国と同じようにグローバル展開するのは難しい。そのため、ブラジル市場向けに若干の改良を加えながら、世界標準のサービスを提供している。
ブラジルの働きやすい会社に認定
近年、同社はブラジルのリサーチ会社の調査により、ブラジルの働きやすい会社（Great Place to Work）に毎年認定されている。昨年は、サンパウロの企業の中で20位、ブラジル全土のIT企業の中で58位にランクインした。
パンデミック以降のハイブリット方式のワーキングスタイルをより快適にするため、開設されたサンパウロ市モルンビ近郊の新事務所では、高層階からの美しい眺めとともに、クラウドサービスを提供する企業らしいコワーキングモデルとなるような自宅以上の快適な空間を社員に提供している。
複数の会社の強みを生かして、グローバルにITソリューションサービスを提供する会社は世界的にみても少なく、ブラジルでも注目を集めて顧客が年々増えている。パートナーシップやアライアンスの申し出も増え、昨年もブラジルでグローバル企業Ciscoなどからベストパートナーシップの認定を受け、同社の社会的価値が評価されている。
雇用を促進「NTTアカデミー」
IT技術専門家の需要が増したパンデミック中に同社で生まれたアイデアが、より広範にIT技術専門家を養成する「NTTアカデミー」や「IT for Girlsプログラム」である。ブラジルの情報通信技術およびデジタルテクノロジー企業協会によると、昨年までに同業界では15万９千人の求人の内、トレーニングを受けた技術分野の専門家は５万３千人しかおらず、全国世帯サンプル調査会社では女性のIT専門家は全体の20％であると発表された。
同社はベンダーやNGOと協力して包括的なIT教育と雇用に焦点を当て、経済的余裕のない人々にトレーニングや無料の認定証を提供し、既に受講した８千人以上がブラジルでの雇用や様々な社会参加の機会を得ている。最近、NTTは「IT for Girlsプログラム」の第２版を開始し、３千人以上の女性が参加する予定となっている。
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ＮＴＴリミテッド社(ブラジル)概要 |
＊本稿は、『ブラジル日報』（2023年８月５日）からの転載です。
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