「男は泣くもんじゃない」と、ブラジルの男の子は育てられる。大人になると、「家事は女のすることだ」、「テレビドラマなんか女の見るものだ」と男らしさであることになお一層プレッシャーが掛けられ、家事やテレビドラマから遠ざけられる。
しかし、つい最近、あるドラマのおかげでその昔のイメージは変わってきた。
ドラマの名は「冬のソナタ」。これがキッカケで、色々なことが日系人社会の中で起こっている。日本ではブームだったが、ブラジルの日系人の間ではブーム以上の「革命」のようなものがおこっているようだ。
先日、「冬のソナタ」のDVDを友だちのお父さんにプレゼントした。ちょうどDVDが届いた時、サンパウロの娘さん夫婦も来ていて、一緒に見た。二人ともとても気に入ったが、最終回まで見る時間がなかった。サンパウロへ戻ると、このご主人はさっそくレンタルビデオショップへ行き、DVDを借り、同じ日系人の友人や隣近所に紹介し始めたそうだ。
その中の一人の主婦の方は感謝の言葉で胸がいっぱいになり、こう語った。「‘冬のソナタ’のおかげで、主人は変わりました。もともと無口だった彼は、定年後、きげんが悪く、私とも口を利かず、私はつまらない毎日でした。それが、‘冬のソナタ’を見てからは、態度が変わりました。家族と話すようになり、私に優しくしてくれるようになりました。信じられないくらい(恥ずかしい)。今では自ら他のDVDを借りてきて、みんなに見てもらい、意見も交わしています。本当に感謝しています」と。
「冬のソナタ」から始まり、他の韓国ドラマが次々とボールのように人から人へと回されているようだ。
韓国ドラマは、今では家族や友人の集まりでの「話の種」。ストーリを少しでもよく分かりたいと、日本語を習う人もいる。特に若者たちが。じいちゃん、ばあちゃんは嬉々として孫たちに通訳している。
この良い刺激を起こしている韓国ドラマについて、わたしはしみじみ考えてみた。なぜ韓国ドラマが受け入れられるのか?
やはり日系人にはブラジルドラマは「似合わない」。登場人物はみな西洋人だし、しぐさやジェスチュアは大げさだ。
逆に、日本の作品はあまりにも「おとなしすぎる」。感情の表現が分かりにくい。「好きなのか、好きではないのか」、ハッキリしない。
一方、韓国ドラマはちょうど真ん中でぴったりはまっている。日系人も同じく、ブラジルと日本の中間に居る。だから、似合っているのでしょう。
それにしても、韓国ドラマは驚くべきものだ! マッチョ社会に育った男たちの心をも動かす力を持っている。捨てたものじゃないよ!
やがて、ニューヨークにもコリーヤン・ブームがやってきた!
© 2011 Laura Honda-Hasegawa