その2>>3.『收穫』の方針と内容『收穫』の方針を各号の巻頭言によって明らかにし、作品をジャンル別に検討してこの雑誌の内容上の特徴点を示しておきたい。
(1)巻頭言『收穫』を創刊した北米詩人協会の趣意については既に述べた。それがこの同人誌の趣意となり、方針ともなるわけであるが、各号に掲載された編集代表者執筆の「巻頭言」の中で『收穫』が目指すべき文学の在り方がもう少し具体的に述べられている。
加川文一は「創刊の言葉」の中で「特殊な事情と環境のうちに今かうして{アメリカで}生活している私共は、其処に異つた新しい、私共でなければ解決できない問題があまた有る・・・・・・そうした問題に就て、まだそれらの解決に就て、考へ、感じ、経験したことを詩、小説、評論などの形式をかりて最高の程度にまで生かしてゆきたいのが私共の願ひであり」、『收穫は』その願いを実現する機関であるとし、「お互ひが自分の生活のなかから創り出したものによつて励まし合ひ理解し合ひ、またそれによつて私共の社会の文化を形づくる上に何らかの寄与するところがあれば欣ばしい」と述べている。加川の目指す文学はアメリカの生活に根差した質の高い独自の文学を創り出すことであり、また日系文化の形成への積極的な参加をも視野に入れて文学活動を進めようということである。これは翁久充が提唱した移民地文芸論を想起させるが、加川における文学の使命が「新しい社会…