Descubra Nikkei

https://www.discovernikkei.org/pt/journal/2008/12/26/nikkeijin-hitojichi/

「日系人=人質」説の逆説

戦時強制立ち退き・収容

日本軍による突然の真珠湾攻撃で日米が開戦したことにより、アメリカ合衆国に住む日系アメリカ人は甚大な被害を受けました。日米両国による宣戦布告を境 に、アメリカにとって日本人は名実ともに「敵国人」となりましたが、彼らと同じように、日系人も「危険な敵性外国人」とみなされたからです。

日系人に対する社会の冷たい視線は、まもなく連邦政府による差別的な政策に結びつきました。1942年2月19日、ルーズヴェルト大統領の行政命令 9066号により、当時、西海岸地域に住んでいた12万人近くの日系人たちは、罪を犯したわけでもないのに、強制的に住居を放棄させられ、わずかな手荷物 しか持つことを許されず、内陸のキャンプに閉じ込められたのです。

これが、現在では世界で広く知られる、戦時強制立ち退き・収容です。

「日系人=人質」説

ところで、この戦時中の悪政が語られるとき、しばしば耳にするのが、「日系人=人質」説です。
つまり、アメリカ政府は、戦地で日本軍に捕らえられたりしたアメリカ人の身の安全を守るために、いわば「人質」として日系人を隔離し収容した、というのです。
罪もなく自由や財産を奪われた日系人の被害者としての立場を考えれば、「日系人=人質」説に一定の説得力があることも理解できます。

その逆も真?

ところが、研究を進めていくうちに、この「人質」説は、実はその逆も(あるいは、逆こそ)真ではないか、と思えてきました。
つまり、アメリカ政府にとって、収容所の日系人は「人質=強み」としての価値よりも、むしろ戦争政策上の「重荷=弱み」としての存在の方がより大きかったのではないか、と感じるのです。

というのも、戦時中、日本は執拗にアメリカを批判するプロパガンダを世界にむけて流していましたが、そのなかで日系人の強制収容は主要なテーマのひとつでした。そして、各種の政府文書を見渡すと、アメリカ政府がそのことを深く憂慮していた事実が浮かんでくるのです。

たとえば、戦時情報局(OWI)のデイヴィス長官は大統領にあてた書簡(1942年10月2日付)で、「この戦争は人種戦争だと主張する日本のプロ パガンダ」に対抗する上で日系人の扱いは重要であると訴えています。収容所を管理した戦時転住局(WRA)も、同年10月12日付文書で、収容政策が敵国 のプロパガンダの材料に使われていることを認識した上で、「枢軸国のプロパガンディストにうまく利用され」ないように、収容政策を多少なりとも民主的に実 施する必要性を強調しています。

その他、プロパガンダ放送を傍受していたFCC(連邦通信局)や国務省などの史料からも、日本をはじめとする枢軸国の対米プロパガンダが日系人政策をやり玉にあげており、さらにはそれを口実としてアメリカ兵捕虜への報復さえもほのめかしていた事実が判明します。

強制収容の不当性をさらに補強

とすれば、「日系人=人質」説それ自体の当否は別として、少なくとも一部のアメリカ政府機関にとっては、日系人を収容所に閉じ込めたことは、対日戦を有利に進めるためのカードどころか、敵国の宣伝攻撃のターゲットとされる大きな弱点だったと考えられます。

たとえ連邦政府が「人質」をとるつもりで日系人を収容していたとしても、その思惑はかならずしも成功していなかったのではないか。かえって、敵国日本に格好の攻撃材料を与える自傷行為ではなかったか。

この反転した「日系人=人質」説は、今後のさらなる研究によって、より実証的に裏づける必要がありますが、いずれにしても、それはアメリカ連邦政府の日系人政策の不当性を何ら否定・相殺するものではありません。

いやむしろ、日系人を差別的に扱ったことが、戦争政策上の取り引き材料になるどころか、敵国日本を利していたという逆説を明らかにすることができれば、立ち退き・収容政策が大失政であった事実をさらに補強することができるのではないでしょうか。

* 本稿は、移民研究会(ディスカバー・ニッケイの協賛団体)が協賛団体の活動のひとつとして、当サイトへ寄稿したものです。

© 2008 Takeya Mizuno

About the Author

Professor Associado, Faculdade de Sociologia, Universidade Toyo. Concluiu o doutorado na Escola de Jornalismo da Missouri State University. Especializa-se na história do jornalismo americano, especialmente no jornalismo nipo-americano. Seu livro mais recente é “Internamento e Jornalismo Nipo-Americano: Revistas Liberais e Jornais Japoneses na Segunda Guerra Mundial” (Shunpusha, setembro de 2005). A página inicial é http://www2.toyo.ac.jp/~t-mizuno .

(Atualizado em dezembro de 2008)

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