ディスカバー・ニッケイ

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シアトル・宇和島屋物語 ~ The Uwajimaya Story


2017年12月8日 - 2018年10月12日

アメリカ・ワシントン州シアトルを拠点に店舗を展開、いまや知らない人はいない食品スーパーマーケットの「Uwajimaya(宇和島屋)」。1928(昭和3)年に家族経営の小さな店としてはじまり2018年には創業90周年を迎える。かつてあった多くの日系の商店が時代とともに姿を消してきたなかで、モリグチ・ファミリーの結束によって継続、発展してきたその歴史と秘訣を探る。

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シアトル ワシントン 宇和島屋(食料品店) モリグチ家 家族 食料品店

このシリーズのストーリー

最終回 新しい世代に受け継がれ

2018年10月12日 • 川井 龍介

CEOにデニス・モリグチ 1868年(明治元年)、日本人は初めて集団で海外に移住した。行先はハワイだった。あれから150年、いまではハワイやアメリカ本土で、日系アメリカ人は、4世、5世が誕生している時代となった。 1世としては比較的遅い時期にアメリカ(ワシントン州タコマ)にやってきた、森口富士松が宇和島屋をたちあげてからは90年余。長年にわたり、宇和島屋は富士松の二男であるトミオを中心に、7人の子供たちが協力して発展させてきた。 とくに、富士松亡きあと同社をけん引して…

第20回 家族をつないだ母の力

2018年9月28日 • 川井 龍介

モリグチ・ファミリーの結束によって成長してきた宇和島屋だが、その結束を生んだのは、それぞれの家業に対する愛情であり、創業者の森口富士松・貞子という両親に対する7人の子供たちの思いやりだった。裏を返せば、両親、とくに母貞子の家族をつなぎとめる役割は大きかったようだ。 出稼ぎ的に渡米した移民一世の生活は、たいてい悪戦苦闘の連続である。森口夫妻も決して豊かではない生活のなかで、子供を育てながら土日もなく身を粉にして働いてきた。その両親の姿をみて、子供たちは小さい頃から自然と家事…

第19回 ファミリーの結束、7人の和

2018年9月14日 • 川井 龍介

1970年にキング・ストリートに店舗を移すのと前後して、モリグチ・ファミリーの宇和島屋(Uwajimaya)は、店舗での小売り以外にも商売を広げ多角化していった。1966年には、食品の卸部門をはじめた。Seattle Asia(シアトル・アジア)から由来しSeasia(シーアジア)と名付けられた。 日本をはじめアジアからの輸入品を、スーパーを中心に他のアジア食品などを扱う店やレストランに卸した。この部門は、モリグチ家の三男のアキラと四男のトシ(トシカツ)が担当した。ワシン…

第18回 移転、そして拡充へ

2018年8月24日 • 川井 龍介

ファミリーの結束のもとに 創業者、森口富士松の亡き後に、二男トミオが社長に就任した宇和島屋(Uwajimaya)は、長男ケンゾー、三男アキラ、四男トシの四兄弟が中心になり事業を広げていった。1962年の万博への出店を契機に、顧客の層が日系、アジア系以外にも広がってきたことがその大きな要因だった。 店では、アジア系料理の料理教室を開いたり、日本以外にも中国、韓国、フィリピンなどアジアの国からの商品を置くようにして、多様なニーズに応えるようにした。そしてこうした流れのなかで…

第17回 法人化と二代目誕生

2018年8月10日 • 川井 龍介

1962年の春から秋にかけて開かれたシアトルの万博(World's Fair)に出店した宇和島屋は、わずか十数坪の小さな店舗ながら多くの客に恵まれ成功を収めた。しかしこの期間のさなかに、森口家の主である創業者森口富士松が64歳で亡くなった。葬儀は、市内の浄土真宗の別院で行われ、およそ900人が参列した。 遺体(遺灰?)は、多くの日系人の墓のあるシアトル北部のワシェリ(Wahelli)という墓地に埋葬された。 愛媛県八幡浜を出て、アメリカに来て商売をはじめ、妻や子供たちの手…

第16回 万博に出店し成功。富士松逝く

2018年7月27日 • 川井 龍介

終戦から5年後の1950年9月、日本とシアトルを結ぶ太平洋航路が再開し、翌年にはサンフランシスコ平和条約(対日講和条約)が締結され、日本は独立を回復した。日米間の交易、交流も進み、60年には、日米修好通商100周年を記念した行事が、日米で華々しく行われた。アメリカでの記念祭には日本から皇太子も出席し、シアトルにも訪れた。 シアトル市内のメイン・ストリートの宇和島屋には、日本からシアトルに入港する船の船員たちやアメリカの軍人と結婚して渡米してきた日本人女性も頻繁にやってきて…

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このシリーズの執筆者

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)