第6回 女子教育(2)
前回は、戦前のブラジルにおける日系女子教育の開花について述べた(本連載第5回参照)。こうした女子教育機関の教育内容として特筆されるのは、知識・教養の教授とともに、日系女子としてのしつけ、礼儀作法の教育が重視された点であろう(写真6-1)。日伯実科女学校の創立者郷原ますえもサンパウロ女学院創立者の赤間みちへも、ブラジルで発行されたいくつかの著書があり、礼儀作法についてそれぞれ健筆をふるっている。
たとえば、筆者の手元にある郷原の著書『生活の知恵―礼法―』は、1959年に日伯実科女学校から発行された戦後のものだが、しつけ教育の傾向をよく表しているといえる。同書の「まえがき」には、まず、「本書は当国生まれの二世の方々の日常生…