ディスカバー・ニッケイ

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二つの国の視点から


2009年11月16日 - 2010年10月22日

海外に住む日系人は約300万人、そのうち在米日系人は約100万人といわれる。19世紀後半からはじまった在米日系人はその歴史のなかで、あるときは二国間の関係に翻弄されながらも二つの文化を通して、日系という独自の視点をもつようになった。そうした日本とアメリカの狭間で生きてきた彼らから私たちはなにを学ぶことができるだろうか。彼らが持つ二つの国の視点によって見えてくる、新たな世界観を探る。

*この連載は、時事的な問題や日々の話題と新書を関連づけた記事や、毎月のベストセラー、新刊の批評コラムなど新書に関する情報を掲載する連想出版Webマガジン「風」 からの転載です。



このシリーズのストーリー

ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その5

2010年4月30日 • 須藤 達也

>>その4多文化、多人種の劇作家としてヒューストンは子どもの頃から文章を書く才があり、高校生の時に書いた詩がカンザス州の賞を獲得している。カンザス州立大学でジャーナリズムの学位を得た後ロサンゼルスに移り、1981年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で戯曲「Asa ga Kimashita」を書いて修士号を取得。その後、南カリフォルニア大学の映画学科で博士号を取り、現在は同大学の演劇学部で演劇論を講じている。また、1990年には学内で脚本部門の大学院を立ち上げ、創作の指導をし…

ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その4

2010年4月23日 • 須藤 達也

>>その3戦争が世界にもたらすものを見つめる日本人とアメリカ軍人との間に生まれたヒューストンにとって、戦争は、人種と同様、大きなテーマである。2007年に、戦争をテーマにした「ヒロシマよ、アフロディテよ―女と影―」が、ロサンゼルスで初演され、昨年(2008年)の8月には日本でも、練馬区にある「ブレヒトの芝居小屋」でリーディングの形での翻訳版が上演された。 1955年5月、被爆した25人の女性たちが、ケロイド治療のために渡米し、1年半の間に計138回の形成手術が施された。「…

ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その3

2010年4月16日 • 須藤 達也

>>その2歴史書から消された戦争花嫁を戯曲に1985年に初演されたこの作品は、『Unbroken Thread』(1993)という戯曲集に台本が収められており、この本の表紙に「ティー」のアメリカでの公演時の写真が使われている。 写真に映っている5人は、カンザス州のジャンクション市に住む5人の戦争花嫁、ヒミコ、アツコ、セツコ、チズエ、テルコ。出身地も夫の人種も違う5人は、ヒューストンの母を含めて、彼女がジャンクション市で知り合った複数の戦争花嫁がモデルになっている。 主人公…

ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その2

2010年4月9日 • 須藤 達也

>>その1アメリカ人とアジア人の親をもつ子どもとして 戦争花嫁の子どもであるベリナ自身も、様々な差別に遭遇している。沖縄出身の日系移民から「あなたのお母さんは売春婦だった」と言われたこと、学校での優秀な成績を学校側が認めたがらないことなど。アメリカは彼女を日本の子と見なし、日本はアメリカの子と見なす。でも、彼女は、そうした両方の存在であるがゆえに、アメリカの持つ独立心の感覚と日本人が持つ集団やコミュニティの感覚の両方をうまく融合することを学び、新しい考え方を創造している、と…

ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その1

2010年4月2日 • 須藤 達也

以前に取り上げたフィリップ・ゴタンダと並んで、ベリナ・ハス・ヒューストンは、日系アメリカ人を代表する劇作家である。出版された作品数は、ゴタンダが8、ヒューストンが6、電子書籍を含めるとゴタンダが15で、ヒューストンが11である。この数字は、日系だけでなく、アジア系、という枠組で見ても、かなり多い。 2人の出自はずいぶん異なる。ゴタンダは両親とも日系人の日系3世だが、ヒューストンは父親がアフリカ・ネイティブアメリカン系、母親が日本人の戦争花嫁なので、3つの血が混ざった2…

アケミ・キクムラ=ヤノ ~ ミクロとマクロの視点で日系人史を再構築する人類学者-その4

2010年3月26日 • 須藤 達也

>>その3「もし日本にいたら・・・」1世女性たちの人生キクムラは、母以外の1世女性からも聞き書きを行っている。それをまとめたのが『Mukashi Banashi: stories of the past from Issei Women in Fowler, California(昔話-カリフォルニア州、ファウラーの1世女性たちの物語)』で、『Promises Kept』でも、最終章にこのときの話が引用されている。 1981年の夏、彼女はカリフォルニア州フレズノのファウラー…

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このシリーズの執筆者

神田外語大学講師。1959 年愛知県生まれ。 1981年、上智大学外国語学部卒業。1994年、テンプル大学大学院卒業。1981年より1984年まで国際協力サービスセンターに勤務。1984年から85年にかけてアメリカに滞在し、日系人の映画、演劇に興味を持つ。1985年より英語教育に携わり、現在神田外語大学講師。 1999年より、アジア系アメリカ人研究会を主宰し、年に数度、都内で研究会を行っている。趣味は落語とウクレレ。

(2009年10月 更新)