ディスカバー・ニッケイ

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デカセギ・ストーリー


2012年6月18日 - 2024年4月18日

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。



このシリーズのストーリー

第十九話 (後編)ナカジマがやって来る!

2014年5月28日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

前編 >> 思い切って日本行きを決心したナカジマ。2ヵ月前までは、サンパウロの「イタリア人街」でピザ職人として働いていた。妻のマリア・セシリアはレース編みやガーデニングを楽しんで毎日を過ごしていた。 ふたりの人生の転機はマリア・セシリアが初めて口にした言葉からだった。「一度でいいから日本に行ってみたいわ」と。 その瞬間、ナカジマは、母親と兄が2年ほど前から日本に住んでいることを思い出した。当時、兄から電話でそのことを聞いていたが、ナカジマは妻には何にも言っ…

第十九話 (前編)ナカジマがやって来る!

2014年4月30日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

日系二世のナカジマ少年は日本語学校に行くのが嫌だった。しかし、日系人が多いブラジルのバストスという町には、どこへ行っても、町の中に日本のような雰囲気が漂っていた。八百屋もパン屋も理髪店も、ほとんどの商店は日系人の経営だった。ホテルもそうだった。ナカジマ家は養鶏所を持っていて、次男のナカジマ少年は卵を売るのを手伝っていた。それも嫌だった。日系人の客に日本語で声をかけられるのが苦手だったからだ。 ナカジマは、まったく日本のことに興味が持てず、会館で行われる日本の伝統行事に参加…

第十八話 「ただいま帰りました!」

2014年4月2日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

ヴァンデルが8歳の時、母親が再婚した。相手は同じ銀行で働いていた日系人だった。お陰でヴァンデルの生活は変わった。私立学校に転校し、柔道やパソコン教室にも通えるようになった。家族も増えてにぎやかになった。義父には15歳の息子と10歳の娘がいた。 3年経った頃、義父は急に「日本に働きに行くんだ」と、少しの迷いもなく決めてしまった。子どもたちは驚いた! 「銀行を辞めて、商売を始めるつもりなんだ。そのためには、稼がなきゃ」と義父が言うと、事前に夫と話し合っていた様子の母親は「もっと…

第十七話 三世代のデカセギ物語

2014年2月19日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

        バチャン1 ゲンキ?        ニホン イマ スッゴサムイ。        デモ ワタシ ダイジョウブ。ゲンキ ゲンキ。                             …

第十六話 サンパウロ発 18:59

2014年1月29日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

グアルーリョス空港は大きな荷物を持った人で混雑している。今は、バカンスシーズンの真っ最中で、ブラジル人はますます海外旅行をするようになっている。 「今年の日本はとても寒いと聞いているから、あかりもおまえも風邪をひかないようになあ。元気でなあ。着いたら連絡するんだよ」と、祖母は心配そうに別れを述べた。 「大丈夫、おばあちゃん。ちゃんとあかりの面倒を見るし、わたしは頑張るから!おばあちゃんも、元気でね」   3年前、ちょうどこの時期にマユミは、突然、ブラジルに戻って来…

第十五話(後編)『あまちゃん』にありがとう!

2013年12月25日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

ユカは、日本で生まれ育ち、15歳の時、両親とブラジルに戻った。 本当は、日本に残って勉強を続け、大学に進学し、栄養士になりたかった。そしてもうひとつ、「成人の日」には着物を着て友人と街を歩いてみたかった。しかし、両親はブラジルに戻って暮らすことを強く望んだので、ユカは仕方なく従った。戻ってからは、なるべく早く新しい生活に慣れようと頑張った。 しかし、高校に通い始めてからたった10日後、早くも、同級生にいじめられた。以来、学校へ行かなくなった。それから2年が経ち、あることがき…

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このシリーズの執筆者

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)