ディスカバー・ニッケイ

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デカセギ・ストーリー


2012年6月18日 - 2024年4月18日

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。



このシリーズのストーリー

第二十七話(後編) 天からの贈り物

2016年12月26日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

前編を読む >> ひらりちゃんへ こんにちは。徳永涼子です。おばあちゃんです。 突然でびっくりしたでしょう。全然お返事しなくて、本当にごめんなさい。 ひらりちゃんが書いてくれた手紙(全部で22通)は全部読みました。写真もクリスマスカードも、大切にしまってあります。おばあちゃんの宝物になっています。 どうして、今まで一度も返事してくれなかったのかと聞きたいでしょう。 ごめんね。いろいろあったんです。まず、ひらりちゃんのお父さんのレオが事故で亡くなった後、立ち直るの…

第二十七話(前編) 天からの贈りもの

2016年11月17日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

わたしの名前は「ひらり」です。珍しくて、いい名前ですって?みんながそう言ってくれます。なんで「ひらり」って? ママが選んでくれました。日系ブラジル人のママは高校を卒業して、すぐに日本へ出稼ぎに行きました。どうしても大学へ進みたかったので、2年ほど日本で働いて学費を作り、ブラジルで大学へ行くつもりでした。 ブラジルの田舎町で生まれ育ったママにとって、日本の都会の生活は、喜びや期待、不安、そして、戸惑うこともありましたが、人生で一番楽しい時期だったと今でも言っています。 …

第二十六話(後編) 「帰ってきちゃダメ!日本で頑張れ!」

2016年10月27日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

前編を読む >> 残業を終え、ケイは家に戻った。郵便受けを開けてみるとチラシでいっぱいだった。「日本語が読めたらいいんだけどなぁ」と一枚ずつ見ていると、一通の手紙が届いていた。 急いで家に入り、灯りをつけて差出人見ると、母親からだった!「えっ!?カアさんが手紙を?珍しいこともあるもんだ!」と、早速封を切った。 写真が一枚だけだった。「えっ!?サクラの木?カアさんがエリザを抱いて写ってる!ブラジルにサクラなんてあったっけ!?」 写真の裏を見ると「帰ってきちゃダメ!日本…

第二十六話(前編) 「帰ってきちゃダメ!日本で頑張れ!」

2016年9月22日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

目覚し時計が鳴ると、ユリカはすぐに起きた。毎朝、アラームが鳴る前にすでに目が覚めている。そしてここ一か月、起きるといつも「今日こそ手紙を書こう」と思う。しかし、いまだに手紙を書けずにいる。 側のベッドを見ると、孫のエリザちゃんがすやすやと眠っている。 「今日も発作が起こらないでよかった!」 窓のカーテンを開けると、外はまだ薄暗い。そういえば、1ヵ月前も外は暗かったなと、ふと思う。 ドアを開けると、番犬のリッキが妙に唸っていた。見ると、玄関にイヤリングの片方が落ちてい…

第二十五話(後編) トシアキの初めてのCARNAVAL

2016年3月23日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

前編を読む >> 「日本へ行くことにした!」と、トシアキが言った。隣町で用事を済ませて、戻って来たときのことだった。 突然の報告に皆は驚いた。「その気があったなら、なぜ僕と一緒に行かなかったの?あのころが一番景気がよかったのに!」と、あきれたように弟のサトシが言った。 「いいじゃん。お兄さんはまだ40代だし、大の働き者だから大丈夫だよ」と、義理の妹は真っ先に応援してくれた。 リビングで孫たちとテレビを見ていた母親はうれしそうに、まるで待っていたかのように、息子の言葉…

第二十五話(前編) トシアキの初めてのCARNAVAL

2016年2月3日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

トシアキは内気な子供だった。近所の子たちが原っぱで、凧揚げをしたり、ボールで遊んでいても一緒に遊ばず、家でおじいちゃんが作る竹細工を手伝っていた。 中学3年生のとき、父親が病気で亡くなり、長男だったトシアキは祖父の代から続いている家業の八百屋を手伝うことに決めた。学校は午前中だったので、授業が終った後夜遅くまで働いた。高校は夜学に進学した。夜明けから午後6時まで、汗まみれで働き、それでも授業には欠かさず出席した。 金曜日は、同級生の半分以上が授業をさぼって、学校の周辺に…

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このシリーズの執筆者

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)