ニルトン・スエナガ

(Nilton Suenaga)

Nilton Suenaga was born in Gabriel Monteiro, São Paulo, in 1987. He’s an architect and urban planner, having graduated from FAU-USP in 2010. From 2011–2015 he was a partner architect at SPBR Arquitetos and he’s currently one of the founding partners of Sabiá Arquitetos. Additionally, he is a professor of Architectural Language at Santa Cruz School and an illustrator responsible for the series [un] predictable são paulo, published on the Vitruvius online portal.

Updated October 2016

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Nikkei Chronicles #5—Nikkei-go: The Language of Family, Community, and Culture

ダイコン、カブ、赤ダイコン、赤カブ

恋人のビアと同棲生活を始めるようになってから、僕は意識して料理をするようになった。大学生のころは料理などしたことがなかった。市販のトマトピューレにニンニクを加えただけで、僕は料理上手だと思っていた。そして今、僕は毎週近くの朝市に行くようになった。健康のことを少し考えるようになったこともあるが、節約が一番の目的だ。

サンパウロ州の田舎町の日系人の一般家庭に生まれ育った僕は、日本料理とブラジル料理がうまくミックスした食卓をいつも囲んでいた。日本式の白いご飯とブラジル料理のフェイジョンと味噌汁の組み合わせは普通だと思っていた。料理に関する言葉も日本語とポルトガル語のミックスだった。例えば、キャッサバの揚げ物は「キャッサバの天ぷら」と呼んでいた。

朝市に行くようになって、スーパーではめったに売っていないが実家や叔母の家で食べていた野菜などを見かけるようになった。時々、チンゲン菜やからし菜を買い、大根やカブを買ったときは葉っぱも利用する。

実家に居たころは、朝市で大根を買うとき「葉っぱを取らないで下さい。漬物にするから」などと言おうとは思ってもいなかった。少年のころは漬物を作る興味など全然なかった。料理を始めてからは、母に教えてもらいたく、夕食直前に電話することが多くなった。

しかし、母と話しをするには、少なくとも30分必要だ。僕の友人によると、母は「イタリアン・マンマ(お母さん)」のように話好きだと。平日の帰宅時間は遅く、夕食の準備前に30分以上話しをすることは無理なので、時々、Google.jpで料理の作り方を検索する。

そこで、子どものころ疑問だった言葉の問題が浮かび上がった。僕は「ダイコン」は長い大根、「カブ」は丸い大根、「アカダイコン」は文字通り赤い大根、ポルトガル語でいう「rabanete(ラディッシュ)」で、「アカカブ」は赤いカブ、ポルトガル語でいう「beterraba」だと教わった。しかし納得いかなかった。なぜなら、「アカダイコン」の見た目は「ダイコン」というよりは「カブ」に近い。そして、ラディッシュは「beterraba」より「アカカブ」に近い。要するに「beterraba」がジャンル違いなんだと思っていた。

先日、Google.jpで「beterraba」の葉っぱの使い方を調べるのに「赤カブ」とキーワードを入れた。すると、ラディッシュの画像が次々と出てきて驚いた!もっと調べると、この「beterraba」は日本で「ビーツ」と言われていると分かったのだ!

僕が教わった「アカカブ= beterraba」という名前は、日本移民たちが、文化が全く違うブラジルで日本文化を継承するときに、考えたあげくに使われるようになった言葉なのだろうと思うようになった。またブラジルの「花梅」は興味深いと以前から思っている。ハイビスカスの花びらを梅の代わりに漬けたものだ。約一世紀前、「beterraba」が「アカカブ」と訳されたのは、間に合わせの言葉だったのだろうか。「お宅、あの丸くてカブに似ているがカブではない、全体が赤い野菜、植えたことある?」当時の農家では、このような会話がなされていたのだろうか。

それとも、スエナガ家の誰かがとっさに作った「スエナガ語」なのだろうか。

そういうことかも知れない。

 

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