1908年4月28日、第一回ブラジル日本移民の781名を乗せた移民船「笠戸丸」が神戸港を出帆し、6月18日にサントスに到着してから今年で111年目を迎えた。この間、紆余曲折を経て、今日ではおよそ190万人を擁する世界最大の日系社会がブラジルで築き上げられている。過日7月8日には、こうしたブラジルにおける日本移民の先達たちのこれまでの功績を祝し、連邦上院議会で日本人ブラジル移住111周年特別式典が催された。
この111周年の節目に、サンパウロ・ニッケイ新聞社の編集長、深沢正雪氏(ニッケイ新聞社編)による『移民と日本人―ブラジル移民110年の歴史から―』(無明舎出版)が刊行された。同書は、著者が日本史の「B面」たる移民史を再検討し、ブラジルの日本人移民史を日本近代史上に組み込もうと試みた点において、従来の「ブラジル」日本移民研究とは一線を画しており、極めて興味深い内容となっている。
長年に亘るジャーナリズムの経験と識見を生かし、これまでにも日伯両国に関して膨大な資料を渉猟して『一粒の米もし死なずば―ブラジル日本移民レジストロ地方入植百周年』(無明舎出版、2014年)や『「勝ち組」異聞―ブラジル日系移民の戦後70年―』(同、2017年)などの著書を精力的に発表してきた氏は、本書において終始、「なぜ、どのような」日本人が日本を出たのか、いわば日本人移住者の「ルーツ(根源)」をめぐ…