第二次世界大戦終結から62年を迎えた昨夏、日本では日系アメリカ人監督による2つのドキュメンタリー映画が話題になった。スティーヴン・オカザキ氏の『ヒロシマナガサキ』(原題 White Light / Black Rain) とリサ・モリモト氏の『TOKKO/特攻』だ。先の大戦をテーマにした映画はこれまでにもあったが、この2作品は日本人にとって特別な意味を持っているよ うに思われる。ひとつには、日本人にとっての日系人に対する親近感。そして、日系人監督の日系人としての感覚とアメリカ人としての視点。それらが作品を見 る私たち日本人に語りかけるものは何か―8月9日の長崎原爆の日に『ヒロシマナガサキ』を見て考えた。
この作品は、広島と長崎で被爆した14人と実際に原爆投下にかかわった4人のアメリカ人の証言を当時のアメリカのニュース映像などを盛り込みながら 伝えている。原爆投下直後の映像はこれまでに見たことのない、衝撃的なものだった。しかし被爆者の体験談は、その悲惨な状況とは裏腹に淡々と語られる。た とえば養育施設でともに過ごし被爆した2人の女性の会話は、ごく自然で被爆が彼女たちの人生の一部であることが伝わってくる。原爆と一人一人の命、人生を 静かにしかし強くあぶり出す。なかには、被爆経験を「いろんな人に話ししてもしかたがないと思って、長い間話さなかった」という証言者もいた。その思い は、日系人…