「日本文化を極めているアメリカ人」を探している私に、ある日、こんな知らせが届いた。「一徹(いってつ)」と呼ばれている少林寺拳法一筋のインド系アメリカ人を紹介したい」。その人物は、パンケージ・ラストギさん。ロサンゼルス郊外オレンジ郡ウェストミンスターで道場を運営して5年目になるという。さっそく取材を申し込んだ。
アメリカの「ミー文化」との違い 道場に到着すると、10数名の子供たちが帯の色別にグループに分かれて、合掌構えに始まる技の練習中だった。その輪の中で、誰よりも大きな声を出し、動きが機敏で生き生きしているのが、パンケージさんだった。
実技練習が終わると、本を手にした子供たちを前に講義が始まった。パンケージさんは青いマットに「人」という漢字を書いた。
「人という字は2本の線が支え合ってできている。人間も同じ。自分一人では生きていけない。少林寺拳法を学ぶということは、単なる武道の技術の習得ではない。人にはそれぞれ個性があり、身体能力も異なるのだということ、だからこそ助け合いが必要だということを学んでほしい」
少林寺拳法は中国の少林拳と混同されやすいが、戦後、四国で創設された。日本九大武道の一つで、「修行を通じて、青少年の精神修養と人格形成を行う社会教育活動に力を入れる」ことが特徴とされる。
パンケージさんが少林寺と出会ったのは、1982年、大学1年生の時だった。場所は…