2006年、東氏は『二つの帝国の間:日系アメリカにおける人種、歴史、トランスナショナリズム』 (オックスフォード大学出版局)を執筆。その後、2019年に現在レビュー中の本を出版した。これらの本は、米国と日本のアーカイブに対する東氏の20年にわたる入念な調査を結集したものである。これらの注目すべき本の特徴は次の通り。第二次世界大戦前の日系アメリカ人の経験を扱った現存する歴史研究のほとんどがトランスナショナルな歴史の理論化に限られているのに対し、東氏がその出版物で行ったのは理論を超えて「日本と米国、そしてそのコミュニティ内で、一世の思想と実践に影響を与えた実際の出来事と具体的な力」を提示することである( 『二つの帝国の間』、219ページ)。この違いこそが、東氏の両著作を、同分野の他の学者だけでなく、一般読者、とりわけ日本人を祖先に持つ読者にとっても読みやすく、さらには魅力的なものにしている点で、大きな違いを生んでいる。
『二つの帝国のはざまで』で東は、一方では白人アメリカ人の人種差別によって抑圧され、他方では帝国日本から国家主義的拡張主義および軍国主義的目標の愛国的代理人とみなされ、同時にアメリカ西部に移住した一世たちが、米国市民権を持たない外国人として独自の集団コミュニティのアイデンティティを築いた様子を示そうとした。そのモノグラフを執筆中、東は、人種差別のためにアメリカ西部を植民地開拓地として諦め、非西洋アメリカ、メキシコ、満州、台湾、韓国など、より有望な世界的な植民地化地を支持するために日本に戻った一世の相当数の例に衝撃を受けた。これが、東が『フロンティアを求めて』を構成する詳細な8つの章で取り組む課題となる。マイケル・ソーントンの権威ある詳細なアジア研究ジャーナルのレビューによると、この重荷を解消することで、東は2つの歴史的伝統、「日系アメリカ人を日本の歴史から切り離す米国国内の民族研究と、世界の他の場所の日本人コミュニティを無視する傾向がある日本帝国(およびより一般的には近代日本の歴史)の伝統」の橋渡しをしようとしている。
よく書かれ、豊富な資料があり、情熱的で説得力のある議論が展開される『 In Search of Our Frontier』は、歴史芸術の真髄といえる作品です。
フロンティアを求めて:日本の国境なき帝国建設における日系アメリカ人と入植者植民地主義
東 英一郎
(カリフォルニア州バークレー:カリフォルニア大学出版局、2019年、368ページ、75ドル、ハードカバー)
※この記事は日米ウィークリーで2020年7月16日に掲載されたものです。
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