ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2016/8/9/visit-to-nagasaki/

平和と文化の町、長崎への旅を振り返って

私の母と夫が、初の九州旅行の行き先として最初に長崎を提案した時、私はなぜその行き先にためらいを感じたのかはよく分かりません。核兵器の恐怖や核戦争の長年の影響を私自身が直接知りたいのかどうか定かではなかったからかもしれません。しかし、それでも行くことにしたのは良い決断だったと思います。

私が出合ったのは、緩やかな起伏の丘陵に抱かれた、大きな湾を見下ろす超平和的で文化的でモダンな町でした。サンフランシスコを思わせる路面電車があり、魅惑的な多民族史があり、多くの文化や人種を迎えた16世紀からの玄関港がありました。たくさんの文化と共にヨーロッパとアジアの伝統が混合した独特の食べ物がありました。私たちは、「長崎ちゃんぽん」などの美味しいスープ料理や「カステラ」というヨーロッパの影響を受けた菓子に挑戦しました。

夫と母と私は、大浦天主堂やグラバー園近くの歴史的な中心街に泊まりました。キリスト教の異なる宗派の宣教師たちが九州の最南端から入港し、イエス・キリストの教えの布教を始めましたが、日本の武将はキリスト教の存在感の高まりを恐れ、16世紀の終わり頃から100年以上にわたり暴力的にキリスト教徒を迫害しました。キリスト教徒であることを疑われた者はイエス・キリストの肖像を踏み、幕府への忠誠を誓わなければなりませんでした。それは「踏み絵」として知られ、踏まなければ死刑になりました。一方で密かに信仰を続ける者もいました。1837年に建てられ26人の殉教者を出した大浦天主堂は、来訪者に聖徒の堅忍を思い出させています。

長崎平和公園の平和祈念像(写真提供:キャロリン・カミイ)

私たちの旅の主な目的は長崎の平和公園と長崎原爆資料館の見学でした。原爆投下の中心地を悼む一体の彫刻のみが置かれた爆心地は簡素な野外広場になっていました。このポセイドンの特大銅像は強さと慈悲を象徴し、1945年8月9日に原爆が投下された爆心地付近に立っています。資料館に入る時、私は核兵器禁止への支持表明を来訪者に呼びかける請願書があることに気付きました。そこには世界中の人々の署名がありました。

資料館は来訪者を教育しています。原爆がどのように投下され、どのように爆発し、具体的にどこに落とされたか、そして実際に被爆し生き延びた人々の話を伝えています。本当に恐ろしいことですが、日本に来る全ての人に資料館の訪問をお薦めします。展示物は、人々がどのように亡くなり、そして爆破を引き起こしたすさまじい高熱をどこで浴びたのか、具体的に伝えています。

私は長崎に非常に多くの民族の人々が暮らしていたことを知りませんでした。中国や韓国、様々なヨーロッパの国々の人々が捕虜として、そうでなければ恐らく働くために移民として長崎に来ていました。これらの人々が正式な死亡者数に含まれることはなく、彼らの遺体が適切に埋葬されることもありませんでした。長崎市が多くの人種で構成され、外国人や様々な人種の人々が死者の一部だったということは開眼させられる事実でした。

次に私たちは歴史的な眼鏡橋(水面に映る絵が眼鏡に見えることから)を訪れ、その後福建省出身の中国人のために1629年に中華街に建てられた崇福寺に行きました。この寺は爆心地から離れた標高の高いところにあったため、原爆の被害を免れました。次に私たちが訪れたのは、この地域の長い歴史を伝える素晴らしいランドマークである長崎歴史文化博物館でした。多くの映像や展示物、復元物からの視覚的な体験はとても良い経験となりました。

旅の最後に私たちは海面の高さから稲佐山(標高333メートル)の観測地点までロープウェイで登りました。観測点からは見事な夜景が見えます。湾を日中見た後、夜の町のまばゆい明かりの中で見ると、なぜ人々がこの町の美しさを讃えるのかが分かるのです。

私は、長崎は歴史的に深い文化を持つ、見るからに美しい町であるというだけでなく、平和と癒しの町であることを学びました。長崎は日本を訪れる旅行者、そして歴史を学ぶ全ての人が訪れるべき町です。

 

© 2016 Carolyn Kamii

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執筆者について

ロサンゼルス在住日系アメリカ人四世。ライフスタイルPR会社Carolyn Kamii Public Relations (www.carolynkamii.com)社長。カリフォルニア州で初のアジア系高等裁判所判事となったアジア系アメリカ人コミュニティの先駆者、ジョン・アイソ判事の甥(姪)の娘。日本へは、親戚に会いに何度も訪れたことがある。

(2016年8月 更新)

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