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排日土地法撤廃の功労者・藤井整を描いた「リトルトーキョーレポーター」 製作陣と出演者に聞く ~その2~

その1を読む>>

エグゼクティブプロデューサー: 文子・キャロル・藤田
監督・脚本: ジェフリー・ジー・チン
主演: クリス・タシマ


「リルトーキョーレポーター」で主人公、藤井整を演じたのは、日系3世の俳優であり監督のクリス・タシマ(Chris Tashima)さんだ。彼は持ち込まれた脚本を読んで強く惹き付けられたと言う。「戦前の話だったので、事前の知識など何もなく読みました。藤井整についても知りませんでした。しかし、脚本が非常に良かったのとテーマが何と言っても素晴らしかった。藤井の歴史を知らせるべきだと思いました」

戦争ですべてを失ってた後、事業で再び成功した逞しい一世の祖父について解雇するクリスさん

何も知識がない戦前の一世にどうやって感情移入したのかと聞くと、それは俳優にとってはいつもの作業だとクリスさんは答えた。「その人が誰であっても、役に近づいていくのは俳優にとって通常のプロセスです。どのような性格だったのか、どのようなことをしたのか、それを見つめた上で藤井自身になりきりました」

役作りの上では、藤井と同じ一世だったクリスさんの祖父が役に立ったようにも思うと、彼は祖父との思い出について語り始めた。

「私の祖父は一世で、ロサンゼルスのイーストサイドでスーパーマーケットを手広く経営していました。戦前はサンタポーラで農園経営に従事していましたが、戦争ですべてをなくしてしまい、戦後、ゼロからビジネスを築き上げたのです。成功したビジネスマンであると同時にコミュニティーリーダーでもありました。子どもの頃、祖父のキャデラックに乗って移動した先で、誰もが彼のことを知っていたという記憶が鮮明に残っています。子どもながらに祖父が皆に尊敬されていることを感じ取ることができました。日本語と同様に英語も巧みだったので、私も不自由なく会話ができました。しかもメキシコ人労働者を雇っていたので、スペイン語も流暢でしたね」

祖父のことを語るクリスさんは誇らしげだった。活動家兼ジャーナリストだった藤井整と、実業家だった自分の祖父、職業は違うが、一世としてほぼ同じ時代に生きた二人には、重なる部分があるのかもしれない。

さて、こうしてクリスさんの賛同を得た監督のジェフリーさんは、早速、二人でミーティングを開いたそうだ。「クリスが参加してくれたことは、駆け出し演出家の僕にとってこれ以上ない幸運でした。毎日、電子メールで連絡を取り合って何でも相談に乗ってもらいました。最初のミーティングでは、制作に当たり、どういう準備をしていけばいいか、どこかに落とし穴はないかなど、それを回避するにはどうしたらいいのか、何がベストか、について徹底的に話しました。彼は僕よりも大規模なプロジェクトの経験を何本も積んでいる人です。今や、クリスは僕にとってのメンターのような存在です」

オスカー受賞者が主演
プロ中のプロが結集して完成

実際の撮影で一番大変だったシーンをジェフリーさんに聞いた。「東京クラブ内のシーンです。30人以上のキャストがセットに集結して予算も使うシーンだったので、僕にとってはプレッシャーでした。借りていた場所の都合で、夕方6時から朝の6時までの12時間で撮影を終わらせないといけないという時間的制約もありました。非常に挑戦しがいのある撮影だったと思います」

また、この映画の中で印象的なのが、リアルに再現された戦前のリトルトーキョーの一番街の風景だ。自動車の姿はなく、両側に今も面影を残す低層の建物が連なり、遠くにはロサンゼルスのシビックホールが見える。コンピュータグラフィックで作られた、その映像は、ビジュアルエフェクトのスーパーバイザーとして「アバター」を手がけた専門家にお願いした賜なのだそうだ。CDだけでなく、プロダクションデザイン、カラー、編集、音響もすべてプロ中のプロが結集した。ジェフリーさんは、オスカー受賞者のクリス・タシマの出演だけでなく、それ以外にも数々の幸運に恵まれた結果、映画を完成させることができたと振り返る。

こうして多くの人々の人的協力と資金提供を得て出来上がった「リトルトーキョーレポーター」は全世界で高い評価を受け続けている。現在はアマゾンでDVDを購入可能だが、上映に関しては来年にイギリス、さらに日系人が多い南米でも計画されている。

さらに今回は予算の都合で30分の短編になったが、できれば藤井整の人生をさらに深く掘り下げた長編映画制作に向けても、キャロルさんとジェフリーさんは意欲を見せる。そのためには藤井整の英語での伝記が必要であり、引き続き調査を続けていくということだ。

その前に、この記事を読んで現在完成している短編を見るかもしれない人々に、3人からそれぞれメッセージをもらった。

「リトルトーキョーの歴史において、過去にその後の日系人たちにとってのより良い生活を実現するために、これだけの困難が克服されたことを、少しでも多くの人にシェアしてほしいと思います」(エグゼクティブプロデューサーのキャロルさん)

「自分の命を犠牲にしてまで、後の人々のために闘った、一人のアジアンアメリカンの歴史を伝えたい、それがフィルムメーカーとしての自分の使命であると思うようになりました。そして、この映画を見た人をインスパイヤしたい、それが僕の願いです」(監督兼脚本担当のジェフリーさん)

「私からのメッセージは、是非ツイッターでフォローしてほしいということ(笑)。それはジョークとしても、とにかくこの作品は関係した人全員が個人的な努力を注ぎ込んで、コミュニティーのサポートを得て、たくさんの人々の血と汗で作られた特別な映画だということです。映画こそ、人間の感情を最も効果的に伝えることができるメディアです。この映画を見れば、藤井整という人物がどういう人だったかが具体的に迫って来るでしょう。是非ご覧ください」(主演のクリスさん)

さて、次回は、同作品に出演した日本人俳優、尾崎英二郎さんへのインタビューをお届けする。

その3>>

 

「リトルトーキョーレポーター」公式サイトからDVD購入可: www.ltreporter.com

 

エグゼクティブプロデューサーからのメッセージ

「リトル・トーキョー・レポーター」はアメリカ国内のみならず、海外のさまざまな地域で上映を行うため、皆様からの献金をお願いしております。個人用チェックの郵送、またはウェブサイトからのクレジットカードによる献金が可能となっております。チェックの宛先はLittle Tokyo Historical Society (小東京歴史協会)とご記入下さい。また、皆様の献金は所得税等の控除の対象となります。日系一世のパイオニアであり、「忘れられた公民権の運動者」であった藤井整への関心と、映画へのご支援に深い感謝の意を表します。


個人用チェック郵送先:

Lil Tokyo Reporter Film
PO Box 3552
Rolling Hills Estates, CA 90274

オンラインによる献金はこちらから:http://www.ltreporter.com/blog/donate/

 

© 2014 Keiko Fukuda

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